子どもたちに広がる新型コロナ感染
フィリピンの英字紙が若年層へのワクチン接種を訴え

  • 2021/9/8

 日本でも子どもたちへの新型コロナ感染の広がりが目立ち、懸念されている。フィリピンの英字紙フィリピンデイリーインクワイアラーは、8月22日付の社説でこの話題を採り上げた。

フィリピンで、新型コロナの子どもたちへの感染拡大が深刻化している (c) Avel Chuklanov /Unsplash

17万6000人以上が感染

 新型コロナの感染が確認された小さな子どもが、ぶかぶかの防護服を着せられ、フェイスマスクをさせられて、たった一人で救急車に乗せられる。日本ではあまり出回っていないが、東南アジアでは胸が痛む光景としてたびたびメディアに掲載されるシーンだ。フィリピンでもこの様子が報じられた。

 「フィリピンをはじめ、世界各地で子どもたちヘの新型コロナ感染が増えており、学校再開を前に、子どもたちへのワクチン接種が必要だという声が高まっている。しかし、フィリピン政府のワクチン接種方針においては、ワクチン数が限られており、子どもたちの優先順位は低い。小児科医は、できるだけ早く大人へのワクチン接種を終了し、子どもたちがワクチン接種を受けられるようにすべきだ。特にデルタ株による感染拡大が心配だ、と指摘する」

 社説によれば、フィリピン国内では8月8日までに17万6000人以上の子どもたちが関せしたという。昨年3月から今年2月までの1年間の累計が4万8411人だったことから計算すると、この半年で新たに12万人以上が感染したことになる。フィリピン政府は保護者がショックを受けないように「あらゆる世代で感染者が増加している」としているが、医師の中には、未検査の子どもや報告されない事例も含めれば、子どもの感染者数はさらに多いとの見方もあるという。

 「今年初めから8月までに、セントラルビサヤ地方では未成年の感染が8000人以上確認された。また、今月上旬には、イロイロ市で4人の新生児が感染して両親から隔離され、バコロド市では少なくとも3人の子どもたちにデルタ株による感染が確認された。子どもたちはいずれも家庭内で感染しており、たとえステイホームをしていても感染リスクから逃れられないことが分かった」

子どもへの接種を阻むワクチン不足

 フィリピンでワクチン接種を受けたのは、8月11日現在、1210万人に過ぎない。これは、対象者の17%に相当し、18歳以下の子どもは含まれていない。集団免疫を獲得するには7630万人への接種が必要とされるが、子どもを含めれば、さらに1200万人から1400万人の接種が求められる。

 社説は「ドイツやイギリス、カナダなどでは、すでに12歳以上の子どもへのワクチン接種が許可され始めた。世界保健機関(WHO)は先進国に対し、ワクチンを公平に供給するために子どもへの接種を延期して途上国にワクチンを寄附するように助言しているが、それでもなお、ワクチンは足りない」と、指摘する。

 幸いにも、子どもたちは新型コロナに感染したとしても、重症化したり死亡したりするケースが少ないといわれる。

 「しかし、子どもたちの安全を考えれば、政府は彼らをウイルスから守る最善の策を考えなくてはならない。家庭に子どもがいる大人に優先的にワクチン接種を行うことも一案だ。そうすることによって子どもたちを守ることにもなる」と、社説は主張する。

 子どもたちは、コロナ禍によって、休校や移動制限など大きな負荷を与えられている。このうえ彼らの健康を損なうようなことが決してあってはならない。子どもたちの未来を奪ってはならない。

 

(原文https://opinion.inquirer.net/143352/covid-19-and-children)

関連記事

 

ランキング

  1.  ドイツ・ベルリンで2年に1度、開催される鉄道の国際見本市「イノトランス」には、開発されたばかりの最…
  2.  今年秋、中国の高速鉄道の総延長距離が3万マイル(4.83万キロ)を超えた。最高指導者の習近平氏は、…
  3.  日本で暮らすミャンマー人が急増しています。出入国在留管理庁のデータによると、2021年12月に3万…
  4.  ドットワールドとインターネット上のニュースサイト「8bitNews」のコラボレーションによって20…
  5.  11月5日に投開票が行われた米大統領選挙では、接戦という事前の予想を覆して共和党のドナルド・トラン…

ピックアップ記事

  1.  11月5日に投開票が行われた米大統領選でトランプ氏が再選したことによって、国際情勢、特に台湾海峡の…
  2.  ジャーナリストの玉本英子さん(アジアプレス・インターナショナル)が10月26日、東京・青山で戦火の…
  3.  ドットワールドと「8bitNews」のコラボレーションによって2024年9月にスタートした新クロス…
  4.  米国・ニューヨークで国連総会が開催されている最中の9月25日早朝、中国の大陸間弾道ミサイル(ICB…
  5.  「すべてを我慢して、ただ食って、寝て、排泄して・・・それで『生きている』って言えるのか?」  パ…
ページ上部へ戻る