プノンペンのゴミ収集業者がストライキ
地元英字紙は「もうたくさんだ。軍隊を動員せよ」と主張

  • 2020/10/23

 カンボジアの首都プノンペンで、ゴミ収集業者がストライキを実施し、10月初旬からの2週間余り、都内のゴミ収集活動が止まった。10月11日以降は豪雨による洪水にも見舞われ、道路にゴミが流れだす事態も招いた。10月15日付のカンボジアの英字紙クメールタイムズの社説は、この問題を採り上げた。

カンボジアの首都プノンペンでは10月初旬から2週間以上にわたり、ゴミの収集業者のストライキによってゴミが放置される事態となった

2週間の回収スト

 プノンペン都が契約するゴミ収集業者「シントリ」の従業員約2,000人は、10月2日から、退職金や年金などの支払い補償を求めてストライキに入った。現在、都が契約するゴミ収集業者はシントリだけであるため、都内ではゴミ収集が止まり、道路わきにはゴミ袋が積みあがり、生臭い匂いが街に立ち込めた。

 社説は、「プノンペンのゴミ問題と、シントリの従業員たちの支払い補償問題は、制御不能に陥った。ゴミは積み上がり、豪雨により流れ出て洪水の被害をより悪化させている。もう、たくさんだ」と、この首都の惨状を嘆いた。

 プノンペン都の仲介で行われた両者の話し合いは、紆余曲折を経て10月14日に妥結し、同日夕方からゴミ収集が再開された。しかし社説は、「折からの豪雨と冠水でゴミはほとんど路上に流れ出て散乱しており、すべて回収するには、数日から数週間かかるだろう。プノンペン都は事態を甘く見ていた。悪天候を踏まえて事態に素早く対処し、解決することができなかったのは、ひとえに官僚体質が原因だ」と、プノンペン都の対応の遅さを批判した。

 さらに社説は、「軍のエンジニア部隊を動員し、フロントローダーやバックホー、ショベルカーなどで一刻も早くゴミの収集にあたるべきだ」と主張する。

 「国内各地が洪水被害に見舞われ、救助や援助を必要としている今、こうした主張は極論だと批判されるかもしれない。しかし、都内のゴミ問題によって洪水被害が深刻化しているのも事実であり、シントリ社の従業員が職務に復帰してもしなくても軍の出動が必要なほど緊急事態だと言っていい」「ストライキしている従業員たちも、プノンペン都の公務員も、ゴミが回収されないことでどんなダメージがもたらされるか想像できなかった。これまでにも同じようなストライキが何度か起きている。もはや、彼らに任せるより、軍とともに片付ける方がましだ。ひとたび収集業者の従業員たちがストライキに入ったら、その言い分の是非は横に置いてでも、軍を動員すべきだ。洪水にでゴミが流れ出している様子が報道されるのは、とても恥ずかしいことだ」

現場の労働者に敬意を

 その上で社説は、「そもそも今回の事態は行政当局や現場で働くゴミ収集業者への理解不足が原因だった」と指摘する。「彼らは制服も支給されず、健康と安全も脅かされつつ、ゴミを収集し続けてきた。ゴミ収集の仕事をバカにしてはいけない。行政も、会社も、彼らに人として接し、街をきれいにしてくれることに称賛を送ろう。彼らは尊厳を持つに値する人々であり、決してごみのように扱ってはならない」

 さらに社説は、このような事態を引き起こした不適切な国土開発計画も批判する。「鉄砲水が発生し、洪水被害がここまで悪化するようになったのは、道路が防波堤のように建設され水の流れを変えてしまったり、もともと貯水池として利用されていた土地を工場地帯にしたりといった開発事業が原因だ。もちろん、産業用地の確保は重要だが、排水設備や灌漑施設が適切に計画されていたら、このような事態は避けられたはずだ」

 カンボジアの農地は、定期的に洪水に見舞われることで土壌が肥沃になってきたという歴史がある。しかし、急速な都市化や工業化によって農地が次々に転用されたことで、洪水の景色が一変した。今年はさらに都心部のゴミ問題が加わり、成長の負の側面が露呈した格好だ。社説には極端な表現や論調も見られるが、「醜いプノンペンをさらしたくない」という強い思いがにじんでいるように感じられる。

 

(原文: https://www.khmertimeskh.com/50773437/enough-of-this-garbage-send-in-the-army/)

関連記事

ランキング

  1.  「ロヒンギャ問題」を適切に理解するための情報を持ち合わせている日本人は限られている。メディアによる…
  2.  8月末、中国とインドの国境に位置するヒマラヤ地域の係争地ラダック地方に中国が侵攻を試みたのを機に、…
  3.  2020年7月1日、香港に国家安全維持法(国安法)が導入され、一国二制度が崩壊した。1997年7月…

ピックアップ記事

  1.  「ロヒンギャ問題」を適切に理解するための情報を持ち合わせている日本人は限られている。メディアによる…
  2.  8月末、中国とインドの国境に位置するヒマラヤ地域の係争地ラダック地方に中国が侵攻を試みたのを機に、…
  3.  2020年7月1日、香港に国家安全維持法(国安法)が導入され、一国二制度が崩壊した。1997年7月…
ページ上部へ戻る