国境を越えて広がるミャンマーの人権侵害問題
長期収監、武器密売・・・報道が伝えないミャンマーをめぐる国際問題
- 2023/12/2
ミャンマー軍がクーデターにより実権を握ってから2年10カ月。国際社会の批判にもかかわらず、軍は民主化を求める国民や少数民族の弾圧を続けており、その姿勢は改善される気配がない。ロシアによるウクライナ侵攻や、イスラエルとハマスの戦争などの報道の陰で、ミャンマーに関するニュースは減ってしまったが、ミャンマー軍は今も他国民をも巻き込んだ問題を起こしている。
刑期を超えた長期収容に苦しむバングラデシュ人
バングラデシュの英字紙デイリースターは10月27日、「ミャンマーに閉じ込められたバングラデシュ国民を忘れるな」と題した社説を掲載した。
社説によれば、ミャンマー西部のアラカン州にある「ブチドン刑務所」には現在、「不法に国境を越えた」として、少なくとも150人のバングラデシュ人が長期間にわたり投獄されている。彼らの中には、例えば、ベンガル湾で漁を終えて帰宅途中だった漁師や、マレーシアへ向かおうとした若者など、さまざまな状況で収監された人々が含まれるという。
社説はその中の一人、26歳の若者について「昨年10月に拘束されて、すでに6カ月の刑期を過ぎているにもかかわらず、いまだに刑務所に収監されている」と指摘する。また「他の人々も同じような運命にあり、多くがより厳しい刑罰を言い渡されている」という。
社説は、なぜ刑期を終えた後も刑務所に拘束されねばならないのか、と疑問を呈する。前述の若者の家族は、地元当局に送還を訴えているが、まだ結果は出ていないという。社説は「これらすべての人々を帰国させるには、国家間レベルの調整と介入が必要だ」と主張した。
和平仲介の裏で武器を輸出か?インドネシアの疑惑
インドネシアの英字紙ジャカルタポストは、10月5日付紙面で「ミャンマーに対するダブルスタンダード」と題した社説を掲載した。
社説によれば、インドネシア国内の人権活動家らは、国家人権委員会に対し、インドネシア国営企業3社がミャンマー軍に武器を売却しているとして、調査をするよう求めた。3社はいずれも疑惑を否定している。
国連の人権専門家は5月、ミャンマー軍が2021年2月のクーデター以降、少なくとも10億ドルの武器や武器の材料を輸入した、と報告した。社説は、「中国やロシアのような国が、ミャンマーに物資を供給している。国際機関には、武器の流入を阻止する手立てはほとんど何もなかった」としている。また、シンガポールにも、国内法を回避してミャンマーに軍需品を販売する「武器商人」がいた、と指摘する。
さらに社説は、インドネシア国営企業がミャンマーへの武器供給に関与していた場合、「ミャンマー国民と軍との間をとりもつ和平仲介者としての地位を損なう危険性がある。何より、インドネシアがダブルスタンダードだと非難されることは明らかだ」と、指摘した。インドネシアが議長国を務める東南アジア諸国連合(ASEAN)は、ミャンマー国軍に対し、暴力の即時停止など5項目の履行を突きつけている。その裏で国営企業がミャンマーに武器を密売していたことが判明すれば、インドネシア政府への信頼の失墜は免れない。
社説によれば、インドネシアは軍部支配から民主化への「ソフトランディング」を成功させた「兄貴分」として、ミャンマーの人々の信頼を得ているという。その信頼に基づく影響力を損なわないためにも、「透明性をもって疑惑を調査し、法の支配を維持しなければならない」と社説は主張している。
(原文)
インドネシア:
https://www.thejakartapost.com/opinion/2023/10/05/double-standards-on-myanmar.html
バングラデシュ:
https://www.thedailystar.net/opinion/editorial/news/dont-forget-our-people-trapped-myanmar-3454096