カンボジアのフン・セン政権が香港の「カラー革命」にみるもの
解党された最大野党元党首の帰国控えて高まる緊張

  • 2019/10/28

 2019年3月から続く香港の民主化要求運動は、これまでに最大で200万人が参加したといわれる大規模な抗議行動となっている。カンボジアの英字紙クメール・タイムズは、社説で香港の抗議行動を採り上げ、「民主化の名のもとに、一定の国家に頼って行われる危険なカラー革命」として、厳しく批判する。その背景には、同様な民主化運動の発生を警戒するカンボジア現政権の思惑が透けてみえる。

カンボジアのフン・セン政権は、同政権が解党した最大野党「救国党」のサム・ランシー元党首が11月9日に帰国することを宣言したことを受け、警戒を強めている。写真は2018年4月の来日時に記者会見に応じたサム・ランシー元党首 (c) AP/アフロ

カンボジア政府の声を代弁か

 社説では、すでに7カ月続いている香港の抗議行動について、「アジアの金融センターの経済や社会の動きを止めた」と、強く批判している。「広範囲に及ぶ抗議活動は、香港に深刻なダメージを与えており、中国政府はこの抗議行動をカラー革命(2000年ごろから中・東欧などの旧共産圏諸国で起きた政権交代要求運動。米国主導だったと言われる)とみなした。中国人研究家たちも、政治的要求や、外国の介入、大衆の扇動、政府への圧力、非暴力アプローチによる権力の移譲を呼びかける点などが、カラー革命の特徴と同じだと指摘している」

 また、社説は、カラー革命の特徴として、外国の介入が暴力の触媒となる、と表現する。そして、カラー革命が生み出すものとして、「社会の混乱、政情不安、国家機能の妨害、国家主権への挑戦、経済の鈍化または経済危機」を挙げる。「このような運動の指導者は、しばしば民主化や人権、基本的自由を大義名分として掲げる。しかし、カラー革命は長期的な政情不安や不景気につながるものなのだ」

 カンボジアの新聞が、このように「カラー革命」に強く反応するのには、理由がある。現在のフン・セン政権が、2018年の総選挙前に、当時の野党勢力を「解党」という手法で排除したことが、国際社会から強く非難されていることだ。現在、カンボジアの国民議会下院は、全議席が政権与党に独占されている「一党独裁」状態だ。だからこそ、フン・セン政権は、国際的な民主化運動の潮流に敏感に反応する。

 また、クメール・タイムズ紙に限らず、カンボジア国内のメディアには昨今、民主化運動と政情不安を結びつけるような論調が目立つ。これは、解党された最大野党「救国党」の元党首が、「11月9日にカンボジアに帰国する」と宣言していることが関係している。政府は、国民に野党勢力支持の動きが広がることを懸念して、メディアを利用し、布石を打っているのだ。野党勢力の放逐以来、政権による報道への圧力は強くなっている。独立紙の社説といえども、これは政府の意向を反映した書きぶり、と思わせる内容だ。

社説が呼びかける相手は

 「国づくりは長いプロセスだ。民主化は旅のようなもので、どんな国であっても、瞬時に民主的な社会や政治システムを作れるものではない。民主主義は、長期にわたる平和や安定のための手段であり、そのためには、長期的にものを考えることが必要なのだ」と、社説は言う。

 そして、香港の若者たちに向けてこう説く。「香港の若者たちは、国造りのプロセスというものについてもっと学ぶ必要がある。たとえば、平和や安定がどれほど価値のあるものか、長い政情不安や内戦を経験した国々から学ばなければならない。その意味で、カンボジアは、自らの体験を通じて、香港の人々に政情不安や内戦の苦しみを伝えることができる。香港の人々は、一つの大国に頼って自分たちの夢を実現しようとしてはならない。香港の未来は、自分たちの手の中にあるのだ。カラー革命は、香港に長期にわたる苦しみを与えるだけだ。若者たちが本当に必要なのは、雇用であり、家族の幸せなのだ。香港の人々よ、目覚めて、現実を見据えて欲しい」

 香港の若者たちに呼びかけるようでありながら、これはカンボジア政府が自国の若者たちに説いているようにも受け取れる。救国党の元党首が帰国する11月9日に向けて、カンボジアの政情は緊迫度を増している。

(原文:https://www.khmertimeskh.com/50654356/colour-revolution-with-hong-kongs-characteristics/)

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