地元英字紙がカンボジア保健省を強く批判
新型コロナ対策で噴出した不満
- 2020/4/7
新型コロナウイルス(COVID-19)は、カンボジアでも感染を広げている。3月24日付のクメールタイムズ紙は、カンボジアにおけるCOVID-19対策について、「保健省の対応に問題がある」と指摘している。
正月休みを前に募る不安
カンボジアの感染者数は4月6日現在で114人。このうちカンボジア人は49人で、半数以上がフランス、マレーシアなどの外国人だ。死者は確認されていない。
2月下旬には、感染が疑われるとして世界各地で寄港を拒否されたクルーズ船ウエスタルダム号の入港を許可するなど、余裕とも思われる態度をとっていたカンボジア政府だが、4月初旬には他の東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国と足並みをそろえ、外国人の入国を大幅に制限するなど、水際対策に乗り出した。
これまでに確認された感染者は欧米諸国に比べると少ないとはいえ、カンボジアは4月12日ごろから正月休みとなり、多くの人が実家のある地方に移動する。また、タイに働きに出ている移民労働者らも多く里帰りを始めており、この大連休をいかに感染拡大せず乗り切ることができるのかが注目されている。
しかし社説は、「保健大臣の交代こそ、より良いCOVID-19対応につながる。現在の保健大臣にはこの危機に対応する力がない」と明言し、その理由について「現在のCOVID-19対策は戦略的な思考と計画性に欠け、効果的でない。感染爆発に対してまったく備えられていないことは、特に問題だ」と指摘する。つまり、全体的に行き当たりばったりの対応策だ、と批判しているのだ。
また、保健省から毎日出される感染状況に関する情報も発表時間が極めて遅く、しばしば夜から深夜になっていたことについても問題視している(4月上旬現在は、午前中のうちに発表されるようになっている)。保健省の発表は感染者数にとどまり、すでに情報が出回っていることが多いためだ。さらに、感染者の行動範囲や感染経路、病状、集団感染の可能性といった分析については公表されないことも問題だ、と社説は指摘する。「患者の行動について国民に知らせることで、読者が自ら感染者に接触したかどうか考えるヒントを提供できる」
というのも、カンボジアでは、感染者と接触したとみられる人がいても、保健省の役人はすぐに検査に連れて行く代わりに、往々にして病院で検査をするようにと告げるだけで帰ることが多いという。「すると、翌日には本人も家族も村から姿を消してしまっているのだ」。感染拡大を阻止するためには、こうした人の動きを徹底的に抑制しなければならない、と社説は訴える。
「情報の透明性を高めよ」
さらに社説は、感染者が隔離されている病院に十分な医療機器や医療人材が配置されているかどうかすらはっきりしないことも問題視している。換気の機能はあるか、医薬品や防護服の備えは――。「保健省は、そうした機材や設備の現状を調査し、足りなくなりそうなら、あとどれぐらい必要なのか公表してパンデミックに備えなければならない」「国民への啓発活動や衛生教育に加え、クラスター感染や集団感染の可能性の有無、感染経路の分析なども予防措置として有効であり、早急な取り組みが必要だ」と、社説は訴える。
強い危機意識の背景には、最近、退院した2人の患者が当初はどんな症状で、どのような治療を受けて回復に至ったのかといった情報が、一切、明らかにされていないためだ。社説はこの問題に触れ、「こうした情報を公開しないのは、ほとんど自殺行為だ」と、強い表現で保健省を非難する。
カンボジアは現在、フン・セン首相率いる与党、カンボジア人民党による一党独裁状態が続き、マスコミも政府への批判を報道するのは難しい状況にある。そうした状況下で同紙が保健省に対してここまで強い批判ができたのは、単に勇気ある報道という側面だけでなく、政府の内部にも何らかの不満や不安がくすぶっていることを示唆しているのではないだろうか。
4月12日から始まるクメール正月の大連休が、カンボジアにとって、国内パンデミックを避けられるかどうかの分水嶺となることは間違いなさそうだ。
(原文:https://www.khmertimeskh.com/50704923/ministry-of-health-should-pick-up-the-pace-on-covid-19-pandemic-2/)