フィリピンの野生生物を保護するために
オンライン取引への移行で取り締まりが難航

  • 2021/6/24

 野生生物の違法取引は、自然豊かな開発途上国が抱える深刻な問題だ。6月6日付のフィリピンの英字紙インクワイアラーは社説でこの問題を採り上げた。

(c) Erik Karits / Pexels

なくならない違法取引

 「コロナウイルスは経済を遅滞させた。野生の動植物の違法取引ももちろん影響を受けたものの、とはいえ、完全になくなったかと言えば、そうではない。むしろ、彼らは最新技術を使って違法ビジネスを継続する方法を考え出した。今こそフィリピン政府が20年前に制定して実効性のなくなった野生動植物保護法を改定し、厳しい罰則を設けるべき時がきた」
 社説によれば、取引の方法がオンラインになったことで規模が拡大し、摘発が難しくなったという。「昨年4月から6月まで、環境自然資源省の野生動植物資源課には違法取引の報告が多く寄せられた。違法取引者たちが、フェイスブックやインスタグラムといったソーシャルメディアでの取引に移行したからだ」
 フィリピンで代表的な違法取引の対象とされるのは、オオトカゲであり、トカゲの商業目的の取引は禁止されている。しかし、違法取引をモニターする団体TRAFFICによると、2017年から2020年に掲載された爬虫類の広告のうち、3分の2はフィリピンからの発信だったという。
 オオトカゲは、エキゾチックなペットとして米国や欧州市場で人気が高い。また、皮革はレザー製品に、肉は食用として販売されることもあるという。またTRAFFICは、絶滅の危機にあるフィリピン森林ガメも、中国やフィリピンでオンライン取引の対象として人気が高いと指摘する。

求められる法律の改訂

 こうしたオンライン取引の拡大を阻止するために、フェイスブックやグーグル、ツイッターを含むIT技術やソーシャルメディア系の企業は2018年、野生動植物のオンライン取引をなくすための世界連合という団体を立ち上げた。団体によれば、2020年3月時点で絶滅危惧種を含む300万以上の掲載が消去されたという。しかし、社説は、「違法取引者たちは新たなプラットフォームとして、ワッツアップやテレグラム、ウィチャットなどに移行しており、個別取引のモニターが極めて難しい」と指摘する。
 社説によれば、フィリピンの法律では、野生動植物の違法な輸送には6カ月から1年の禁錮刑、または5万ペソから10万ペソの罰金刑が、また、野生生物の狩猟には2年から4年の禁錮刑、または3万ペソから30万ペソの罰金が、そして、違法取引には5000ペソから3万ペソの罰金刑が、それぞれ規定されている。また、特に絶滅の危機にある野生生物の殺害については、6年から12年の禁錮刑と、最高100万ペソの罰金刑が科せられるという。
 現在、フィリピン国会では、この罰則をさらに厳格化する議論が始まっている。たとえば、絶滅の危機にある野生生物の殺害については12年から20年の禁錮刑とし、最高200万ペソの罰金を科すというものだという。
 「法律を改定するだけでは違法な野生動植物の取引は終わらない。しかし、問題を小さくすることはできるかもしれない。新型コロナが収束して世界がまたオープンになったとき、違法取引はまた戻ってくるだろう。その時のために、より良い準備をしておくことが必要だ」 
 新型コロナが収束した後、経済や行動の制限がなくなれば、犯罪もまた「復活」する。後々、振り返った時に「コロナ禍が幸いした」と言えるように、準備が進むことを祈りたい。

 

(原文:https://opinion.inquirer.net/140913/curbing-wildlife-trafficking)

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