新型コロナウイルス カンボジアの感染拡大は抑制されたのか
感染爆発への警戒とビジネス再開への要求のはざまで
- 2020/4/30
すでに2週間あまり国内で新型コロナウイルスの新たな感染者が確認されていないカンボジア。感染爆発は回避されてこのまま終息するのではないか、との楽観的な雰囲気が国民に漂い始めている。しかし、本当にこのまま終わるのか。カンボジアの英字紙クメールタイムズ紙は、4月23日の社説で現状を採り上げた。
検査のキャパシティには疑問も
カンボジア国内でこれまでに確認されている感染者数は122人。このうちうち110人がすでに回復しており、4月12日に最後に感染者が確認されて以来、ここ2週間あまり新たな感染者が確認されていない。また、感染者が出たのは全24州のうち13州にとどまっており、社説は関係当局の取り組みを評価している。
その一方で、社説は国内の楽観ムードに対し、「本当に最悪の事態は回避されたのだろうか。だれも正確な回答は出せない」と、疑問を呈する。実際、感染拡大の第二波を予測する見方もある中、いつまで抑制策を続けるべきなのか。社説は、「政府は難しい判断を迫られている。封じ込めのための施策を解除することで、無症状の感染者に起因する感染拡大が起きる危険性がある」と、指摘する。
「保健当局はこれまでのところ、感染ルートの追跡や濃厚接触者の検査にきちんと対応できていると言える。しかし、現在、検査を実施しているパスツール研究所では、一日最大500件しか対応できないため、今後、感染者が急増して検査が急がれる状況になった場合、手が回らなくなるのは明らかだ」
カンボジアでは、122人の感染者のうち半分以上が外国人であることから、「感染は外国から持ち込まれたもので、国内での爆発的な感染拡大は封じ込めができている」との見方が広まっている。
最初に感染が確認されたのは、1月27日、武漢からシアヌークビルを訪れた中国人男性だった。また、最大のクラスター感染とみられるのは、マレーシアでの宗教行事に参加して帰国した人たちで、44人の感染が確認された。うちカンボジア人は31人。23人がマレーシアから帰国した人たちで、残り8人は彼らへの濃厚接触者だった。この行事の参加者からは、13人のマレーシア人もカンボジア国内で感染が確認された。このクラスター感染だけで、国内感染者数の3分の1を占める。
もう一つのクラスターは、フランス人旅行者のグループで、およそ40人の感染が確認された。これには、彼らと濃厚接触のあったカンボジア人2人が含まれる。
こうしたカンボジアの状況を踏まえ、社説は、「欧米とイラン6カ国からの外国人の入国を禁じ、他のすべての国から外国人が入国する際にも無感染証明書の提出を義務付ける現行の厳しい水際対策を当面続けるべきだ」と、主張する。
課題は経済活動の再開
その一方で、社説は「そろそろ国内の経済活動の再開を検討すべきだ」とも指摘する。
カンボジア政府は3月半ば以降、国内すべての教育機関を休校とし、ナイトクラブやカラオケ、ジム、観光施設などに休業を指示した。また、多くの人が集まる行事やイベントの開催を厳しく制限している。
また、4月13日から16日のクメール正月の休暇を「延期」し、この時期に毎年恒例となる国民の「大移動」を封じた。この期間は通常の勤務日とされ、州を超える移動は禁じられた上、上司の許可を得て休暇をとった労働者も休暇明けには14日間の隔離措置の対象とされるなど、感染拡大阻止に向けて厳しい対策がとられた。
移動禁止は、4月16日の未明に解除された。これは想定されていた時間よりも早かったが、社説は「この判断は正しかった。なぜなら国民の経済活動は少しずつでも再開されなければならないからだ」と、する。
そして、ビジネスの再開を「次のステップ」と位置付け、次のように述べる。
「次のステップとして、ジムやスパ、ビアガーデンなど、閉鎖が続いているビジネスの再開を真剣に考えなければならない。健康チェックを厳しく行い、ソーシャルディスタンスを保つことができるなら、カジノについても再開を検討すべきだ。なぜなら、こうしたビジネスがことごとく停滞したことで影響を受けた労働者の数は著しく多く、わが国の経済にも甚大な打撃をもたらしているからだ」
国際通貨基金(IMF)は、カンボジアの今年の経済成長率が内戦終結後初めてマイナスに陥ると予測した。その他の国際機関も、きわめて低い成長率を予測している。感染拡大がみられないなか、国民の間に「一刻も早くビジネスを再開し、通常生活に戻りたい」という気持ちが高まっていることを、この社説は映し出している。
しかし、国境を越えてウイルスはやってくる。広い視野に立った対策が、今こそ必要だ。
(原文:https://www.khmertimeskh.com/50715990/pandemic-in-cambodia-may-be-under-control-but-has-the-curve-flattened/)