中国企業の二面性表す病院の歴史
中国人女性記者が報道番組に込める願い
- 2019/7/15
中国とスーダンをつなぐ病院
そんなシャロンさんは、この日、スーダンにあるアブオウシャ(Abuausher)病院のことを話してくれた。シャロンさんは2008年より3回にわたってこの病院を取材したことがあるという。
首都ハルツームから南東約110kmに位置するゲジーラ州の小さな町にあるこの病院は、中国にとって縁が深い。中国は1963年より対外援助医療隊をアフリカ各国に派遣しているが、陝西省からスーダンにやってきた医療隊が、イギリス植民地時代の1929年にできた牧場の牧舎を病院に改造して活動を開始したの1970年代前半のことだった。以来、現在にいたるまで、アブオウシャ病院は、医療隊の活動の拠点のひとつになっている。
さらに、2009年には、中国の政府系NGOである中国扶貧基金(China Foundation for Poverty Alleviation:CFPA)が、現地の有力NGOであるAlbir & Altawasul Organization (BTO)、中国大使館、国有石油企業の中国石油天然ガス集団(CNPC)と連携して母子保健分野の協力を開始した。その対象として選ばれたのも、これまで医療隊派遣を通じて深い関係を築いていたこのアブオウシャ病院だった。
建設支援から持続的な運営支援まで
従来型の中国の対外援助による保健分野の事業は、設計(engineering)、調達(procurement)、建設(construction)を含む建設プロジェクトの建設工事請負契約であるEPC契約によって中国企業が建設し、現地に引き渡すやり方が主流で、持続性が担保されにくいという側面があった。
そこで、CFPAは、長年にわたって中国国内の貧困地域の母子保健を支援してきた経験と知見をもとに、建物の建設に加え、運営協力も組み合わせた新しいプロジェクト「スーダンにおける母子健康実証プロジェクト」を開始した。具体的には、①母子保健病棟を増設するとともに、他の病棟も改築し、設備や医薬品を提供する、②病院のマネジメントを改善するとともに、当該地域で母子保健のネットワークを整備する、③中国国内で医療ボランティアを募り、現地の医療従事者を育成する、④幅広く関係者を募り、病院の運営資金を確保する、という4つのコンポーネントから成るプロジェクトである。