「習近平独裁新時代」を前に世界が覚悟すべき二つのリスク
台湾有事と中国支配のグローバル・ルールを読み解く

  • 2022/10/31

海外在住華人に対しても強まる監視

 中国の考えるグローバルな安全保障枠組みについて、最近、興味深い報道があった。スペインの人権団体セーフガードディフェンスが9月に発表したリポートによれば、中国によって世界30カ国に54もの「警察局」が置かれているというのだ。「警察局」とは警察に似た組織で、中国本土の公安部の指示を受けて、カナダをはじめ海外に移住したり亡命したりした中国人や華人に対して秘密里に執法行為を働いているという。カナダのトロント市内にも三つの警察局が存在すると言われており、カナダ連邦警察は10月27日、この地域に住む華人が警察局によってどのような嫌がらせや圧力を受けているのか、捜査を開始すると発表した。ちなみに中国外交部は、このリポートについて「完全な錯誤」だとしているが、「中国人のためにサービスを提供する」という名目で無料の公安サービスを提供する機関があることは認めている。

 トロントやバンクーバーに住む華人の証言によれば、在外華人や中国人への監視、圧力などを通じて、「容疑者」に対して帰国するよう説得するといった行為があったという。中国本土では、公安の任務の一つに政治安全保衛があり、中国共産党体制の安全を揺るがす恐れのあるイデオロギーを持っていたり、言動をとったりする人物を取り締まっているが、これを国外でも勝手にやろうとしていることになる。

中国公安化する香港警察(2019年9月 筆者撮影)

 また中国は2022年4月、南太平洋島嶼国のソロモン諸島と安保協定を結び、ソロモン諸島内で治安問題が起きた時、ソロモン諸島政府の要請を受けて中国が軍を派遣できるようになった。さらに中国公安当局がソロモン諸島の警察に武器などを供与したり、現地の警官に研修を行う人員を派遣したりした結果、ソロモン諸島内で起きた民主化運動をソロモン警察がテロリスト扱いして弾圧するようになるなど、ソロモン諸島警察の中国警察化が顕著になっている。
こうした現象を踏まえると、中国がグローバルな安全保障枠組みの構築に参与するということは、言論の自由を掲げて政権を批判する市民を、秩序の維持を理由に武力で鎮圧する中国式の強権政治を国外に拡大することにほかならず、途上国や新興国の中国化と独裁化を推進することと同じである。そして、自由を求めて海外に逃げてきた華人たちも中国の監視の目から逃れられなくなれば、やがて中国人ではなくても中国に批判的なことが言えない中国式価値観が支配する国際社会が構築されることになる。中国が推進する人類運命共同体の構築とは、中国式の権威主義と強権政治を唯一の正義とする共同体を構築することであり、その運命からいかなる人も逃げられないということだ。

問われる日本の対応

 これら二つのリスクは、同時に発現するかもしれない。中国が武力によって台湾独立派と民進党支持者に対して武力弾圧を行い、強引に台湾統一を行ったとしても、「これは台湾の治安維持のために必要なことだ」「台湾問題は中国の内政問題だ」という中国側の主張が通る国際社会が出来上がっている可能性があるのだ。
 中国と一衣帯水の位置関係にある日本は、台湾情勢との関わりも密接だ。そんな日本に住む私たちにとって、このチャイナ・リスクを具体的にどう評価し、対応していくべきか、きちんと国内で整理し共有することは、当面の喫緊の問題だと言えるだろう。

 

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