危機に瀕するアメリカの民主主義 南アジアのまなざし
パキスタン紙とインド紙が示す強い懸念

  • 2026/3/2

 アメリカでは、ミネソタ州で活動している移民・税関捜査局(ICE)の捜査官が市民を射殺する事件が起き、強い反発が起きている。さらにアメリカのロック歌手、ブルース・スプリングスティーンがトランプ政権を批判する新曲を発表し、反響を呼んでいる。

ライブステージに立つブルース・スプリングスティーン氏(2023年2月27日撮影) © Dharmabumstead / wikimediacommons

権威に抗議し人々の心をつなぐ歌

 ミネソタ州の事件とスプリングスティーンの歌の反響は、国外にも広がっている。インドの英字メディア、タイムズ・オブ・インディアは1月30日付で「歌え、人々のために」と題した社説を掲載した。

 社説は、「スプリングスティーンの歌は、ミネアポリスを絶望の淵から救い出した。残忍なICEの戦術に最前線で立ち向かう市民たちと共に、連帯だけがなし得る、光よりも速く世界を駆け巡った歌で」と、たたえた。さらに、「普通の人々が、人間の尊厳を守る戦士へと変わる新たな勇気を注ぎ込んだ」とも評した。

 さらに社説は、過去にもこうした歌が権威への抗議を訴え、人々の心をつないだことを指摘した。その一つが、ベトナム戦争の時に発表された、ジョーン・バエズの「Saigon Bridge(邦題:サイゴンの花嫁)」である。社説は、「波を静めるまでに/あと何人の子どもを殺さねばならぬ?」という歌詞を引用し、これはパレスチナのための歌でもある、と指摘した。

 また、第二次世界大戦中にイタリアの反ファシズム武装組織が歌ったレジスタンスの歌「ベッラ・チャオ(邦題:さらば恋人よ)」がヒンディー語やベンガル語、パンジャブ語など、33言語に翻訳されていることを挙げ、「抗議の音楽は文化を超えて軽やかに渡り歩く。それは常に現代的な旋律だ。なぜなら、世界中のあらゆる政府が、時として人々の声を無視するからだ」と述べた。これは、アメリカにだけ向けられた視線とは限らない。これらの歌は、今のアメリカが抱えるきわめて深刻な民主主義の危機を共有するすべての国の人々に、そして政府に向けられた歌だ。

イランへの攻撃の長期化を危惧

 アメリカの最近の動きの中で注目されているもう一つの問題が、イランへの攻撃の可能性だった。パキスタンの英字紙ドーンは、1月31日付の社説でこの問題を論じた(*編集部注:その後、アメリカとイスラエルは2月28日、イランに対して大規模な攻撃を開始した)。

 社説は、「アメリカがイランに対する新たな攻撃を検討し続けるなか、パキスタン政府の高官が隣国を標的とする侵略行為に反対する立場を明確にしたことを歓迎する」として、政府の立場を擁護した。パキスタンのシャリフ首相は、イランのペゼシュキアン大統領と会談し「持続的な対話と外交的関与の必要性」について再確認したという。

 社説によれば、パキスタンの立場は、サウジアラビア、UAE、トルコなど、地域の共通認識に沿うものだという。「パキスタンはイランと長い国境を接しており、地域の不安定化は直接的に影響する」と述べ、「道義的な明確さ」をもってアメリカの攻撃を批判している。

 さらに社説は、「アメリカは短期間でクリーンな作戦を想定しているが、それは誤りだ」と論じ、その理由として、イランが昨年、アメリカとイスラエルから攻撃を受けたことで教訓を得ており、「次はより強力に反撃する」と表明していることを挙げる。「いかなる戦争も血みどろの戦いとなり、世界経済に甚大な破壊をもたらすだろう」と、社説は強い懸念を示す。

 その一方で、社説はイラン政府が国民の正当な不満に適切に対処し、人権状況を改善する努力をすべきだ、とも指摘。そのうえで、「いかなる変化も国内で起こるものでなければならない。国外から仕組まれたものであってはならない」と、念を押している。

 

(原文)

パキスタン:

https://www.dawn.com/news/1970047/stance-on-iran

インド:

https://timesofindia.indiatimes.com/blogs/toi-edit-page/sing-for-the-people/

 

 

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