高まる中国の脅威に危機感募らせるインド
地元紙「米国との軍事連携で東アジアを守れ」と主張

  • 2020/11/2

 インドと米国は10月27日、ニューデリーで米印の外務・防衛担当閣僚会議(2プラス2)を開いた。インドの英字紙タイムズオブインディアは社説でこの話題を採り上げた。

インドは急速に存在感を高めている中国に警戒を強めている (c) CHUTTERSNAP / Unsplash

安全保障上の最大の脅威

 社説はこの2プラス2協議について、「(北部)中印国境での対立が続く中、また、米国と中国との勢力争いが起きているさなかに開かれるこの協議は、米国とインド、双方にとって戦略的な協力関係を強化する機会となる」と、指摘する。

 報道によれば、インドと中国は9月上旬以降、北部パンゴン(中国名は班公)湖周辺の中印国境地帯で対立が続いている。中国側は「インド軍が実効支配線を越えて発砲した」と批判し、インド側は「威嚇のため発砲したのは中国軍だ」と反論。事実であれば、緊張緩和のために両国で取り決めた国境地帯での銃火器使用禁止を破ったことになるという。

 米中対立に加え、中印の緊張も高まるなか、社説が注目するのは、近く南インドのマラバル海岸で開催される予定の海上合同軍事演習だ。「米印の2プラス2協議は、日本、米国、豪州、インド戦略対話の枠組みであるQUADに新たな活力を注ぐものになるだろう。さらに、近く開催されるマラバルでの海上合同軍事演習には、この13年間で初めてQUADに加盟する4カ国すべてが参加する」

 社説は、「中国のプレゼンスがいまや米国とインドの安全保障戦略上、最大の脅威であることは疑う余地がない。中国が米国勢力を東アジアから追い出し、インドを中国中心の仕組みの中に従属させたいと考えているのは明らかだ」と、強い調子で中国の脅威を表現する。

カギを握る三大国のバランス

 さらに社説は、「こうした状況は1962年の中印国境紛争を想起させる」とも指摘する。1962年10月にヒマラヤ山中の国境をめぐって中国軍とインド軍が武力衝突したことが、その後も長く続く両国の確執の始まりだと言われている。社説によれば、米国は当時、劣勢に立ったインドに武器を供与したという。「今日われわれが直面している中国の脅威に対し、今一度、あの時のように米国とインドが軍事的に連携することが求められている」と、社説は主張する。

 その上で、インドの軍事力の近代化が、中国に比べて格段に立ち遅れていることを指摘。「このギャップを埋めるには、米国をはじめ、西側諸国との軍事協力を進めるしかない」と言い切る。さらに、米国と地理空間情報を共有するための基礎的な交換・協力協定が間もなく署名されることを歓迎している。

 さらに社説は、米国が第二次世界大戦時に制定したレンドリース法(武器貸与法)を引き合いに出し、「われわれもこの法律を参照すべきではないだろうか」と問いかける。武器貸与法とは、米国が1941年から1945年にかけて、イギリス、ソ連、中国、フランスなどの連合国諸国に対し、基地提供などと引き換えに軍需物資を供給した仕組みである。「米国が当時のような支援を行えば、中国に対抗するインドが救われるのみならず、米国自身にとっても中国に高い代償を支払わせるという目標が達成される」と、社説は主張する。

 第二次世界大戦や60年代の中印国境紛争の経験を振り返りつつ、激しい言葉で安全保障上の危機を指摘するこの社説は、中国の脅威がそれだけ今日のインドにとって切実な問題であることを映し出している。米中印の三大国のバランスは、国際社会の安定と平和に大きな影響を与える問題であり、米大統領選の行方とともに、目が離せない。

 

(原文: https://timesofindia.indiatimes.com/blogs/toi-editorials/balancing-china-india-us-22-dialogue-should-take-defence-ties-to-the-next-level/)

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