大国インドがワクチンに寄せる期待
人口13億人超の感染予防と経済回復策
- 2021/2/17
新型コロナの感染者が1000万人を超えたインドで、今年1月16日、ワクチンの接種が始まった。製薬会社が急ピッチでワクチン製造を進めるインドでは、ワクチン接種の対象者がどんどん拡大されている。1月31日付のインドの英字紙タイムズ・オブ・インディアは、社説でこの問題を採り上げた。
ワクチンに懸ける思い
インドの新型コロナ感染者は1月末現在で約1,080万人。このうち15万人余りが死亡している。1日当たりの感染者は現在1万8,000人前後で、少ないとは言えないものの、ピークだった昨年9月半ばには1日あたり9万6,000人の新規感染者数を記録したこともあるため、そのころに比べれば、1日の感染者数は減ってきていると言えよう。
今、インドで注目されているのが、新型コロナのワクチンだ。多くの国がワクチンの獲得に必死になっているなか、インドでは、世界最大規模でワクチンの製造が進められている。社説は、このワクチンこそが経済回復の決め手だと主張し、次の見通しを示す。
「インドの2021年から22年の経済成長率は11%と予測されているが、これはワクチンの接種状況次第で変わってくるだろう」
インドでは現在、1月に接種が開始されたワクチンの2回目の接種がスタートしているという。
「今週の木曜と金曜だけで、国内110万人の医療関係者にワクチンが接種された、感染予防の最前線で働く人々にも対象は広がっており、迅速で正確なワクチン接種が求められている。このような形で接種対象者が広がれば、経済回復にも良好なインパクトが生まれるだろう」
社説によれば、インドは今後、全国民に対するワクチン接種に先駆け、医療従事者約1000万人と、感染予防対策関係者約2000万人、そして2億7000万人の高齢者や既往症のある人たちにまず接種を行う計画だという。「インドのワクチンは安価で扱いやすい」という報道もあるという。また、朝日新聞によれば「インド製のワクチンの価格は中国製の5分の1、米国製の1割程度」であるうえ、保存温度も比較的高温でよく、保管や輸送が簡単だとされる。
迅速で確実、かつ多量に接種するために
社説は、「ワクチンの接種対象者が増えるに従い、効率的な接種システムが重要になってくる」と、指摘する。ワクチン接種の速度を遅くしてはならないからだ。接種場所も、当初の3000カ所から1万カ所近くに増やしたという。
「すべての接種場所をフル稼働し、1日に100万人規模で接種できるようにしなければならない。インド政府が感染爆発を抑えるために主にワクチン接種を選ぶなら、迅速で確実、かつ多量の接種が必要になる」
しかし、インド国内にはワクチン接種に伴う副作用への疑念も根強く、場所によってはワクチン接種をしたがらない人も多いという。社説は、地域によって接種率にばらつきがみられると指摘し、「接種が遅れている州もあるが、オリッサ州やハリヤーナー州、ラジャスタン州での成功例から、どうすれば人々の信頼を得られるか学ぶべきだ」と指摘。さらに「副作用への懸念があるにせよ、経済的な刺激策より迅速なワクチン接種の方が、感染抑制に効果がある」と、主張する。
人口13億5000万人のインドでいかに迅速に安全なワクチン接種が行われるか。この問題は、人口規模から言っても世界的に見ても一大事業だと言える。とはいえ、数が多いだけに、結果についてきめ細かく正確な情報が検証され、発信されるかどうか不明だ。未知のウイルスの活動を抑え込むための未知のワクチン。人類は今、歴史的な挑戦に直面しているのかもしれない。
(原文: https://timesofindia.indiatimes.com/blogs/toi-editorials/vaccine-stimulus-rollout-has-been-disappointing-it-must-do-better-with-frontline-workers/)