ケニアのイマドキ女子たちの選択
ギャングからお洒落へ? ドレッドヘアの流行が映し出すもの

  • 2020/2/29

 時代と共に移り変わる流行。ここケニアでも、首都ナイロビを中心に、4~5年前から癖の強い髪をまとめて編み上げるドレッドヘアーの女性をよく見かけるようになった。
 もともとは男性のヘアスタイルとして生まれ、ギャングや不良といった「ちょい悪」なイメージも相まって人気に火が付いたが、髪の毛の束を編み込む付け髪(いわゆるエクステンションと呼ばれ、縮れ毛の多いこの国ではストレートヘアーが人気だ)やウィッグより手入れが手軽であることから、女性にも急速に広まっている。

 人気が高まるにつれ、地毛のドレッドヘアーを切って売るビジネスモデルも生まれた。女性の髪であれば、約3万シリング(約3万3千円)から、高い時は10万シリング(約11万円)の価格で取引されることもあるという。月給2万シリングの求人に応募が殺到するこの地において、破格とも言える値が付く人気の裏側を取材した。

一口にドレッドヘアーと言っても、そのスタイルはさまざまだ。ケニアで急増するドレッド女子たちは、自らの意志でファッションも人生も選び取る新たな女性像の象徴なのかもしれない(筆者撮影)

急拡大するビジネスチャンス

 ナイロビで庶民向けのサロンを経営して15年になる。ジョージ・オバンダさんは、ドレッドが広まる様子を最前線で見てきた。

 「うちの店で今、一番人気が高いのは、やっぱりドレッドヘアーだね。この辺りの理容店にとって、髪をドレッドに編み上げるのは必須のスキルさ」

 少し前までドレッドを編んだことがなく、依頼を断り続けていたジョージさんだが、練習を繰り返した結果、ドレッドはいまや店の人気メニューの一つとなり、男女問わず客が増えているという。

 人気の理由は2つあるとジョージさんは話す。

 第一に、値段が安いこと。

 付け毛やウィッグは1カ月5000シリング(約5500円)と高価なうえ、清潔に保つのも難しい。その点、ドレッドヘアーであれば、2000シリングくらいで髪型を維持できるという。 

 第二に、メンテナンスが簡単であること。

 他の髪型と同じように、ドレッドヘアーも髪が伸びるため、定期的に髪を巻き直す必要がある。初心者であれば二週間に一回、髪が馴染んできても、月に一回は理容店に行かなければならない。衛生上の観点から言えば、最低でも二週間に一度は洗髪した方が髪や頭皮のトラブルを避けられるが、当然、その度にセットし直す必要がある。一見手間に見えるが、それでも付け髪に比べれば維持は簡単だという。

 ドレッドブームのおかげで商売が上々なジョージさんだが、複雑な思いもある。

 「自分の髪を売ろうとするお客は、確かにいるね。こうした人のおかげで、自分の髪が伸びるのを待てない人や、髪質が合わない人でも、手軽にドレッドを楽しめるのは、確かに良いことだと思うよ。長さにもよるけど、100房で2万シリングから10万シリングの現金収入が手に入るわけだしね」とした上で、彼は次のように話す。「お金に困って泣く泣く自分の髪を売る女性もいるんだ。そういう人の髪を切るのは、理容師としては複雑だね」

髪をドレッドに編み上げるジョージさん(奥)と客のジェニーさん(筆者撮影)

 筆者が訪ねた時にちょうどドレッドヘアーの手入れをしていたジェニーさん(仮名)は、妊娠して髪の手入れがわずらわしくなったのを機に、ドレッドヘアーを試したという。

 「はじめのころはサロンに行くのも面倒で、自分で何とかしようと思ってたんだけど、想像以上に周りからの評判が良かったので、サロンできちんとドレッドを整えるようになったの。旦那も私の今の髪型を気に入ってくれているようなので、満足しているわ」

 自慢のドレッドヘアーを整えるため、財布の中身と相談しながら月に1~2回程度、サロン通いを続けている。ヘアースプレーも使うが、一缶350シリングで済むのでお手頃感が強いという。

 髪を売ることをどう思うかジェニーさんに聞いてみると、「髪が伸びたら売るかもしれない」と言ったが、そこまで関心もないようで、女性にとって大切な髪の毛を安売りする気はなさそうだった。

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