モンゴルの障害者を描いた「STAIRS」が東京の映画祭で受賞
ゾルジャルガル監督「もっと強く、アクティビストであれ」

  • 2021/8/5

考え方や社会を変える武器

  「わが子は皆と同じように働けない」という保護者の思いは、「外に出すと危険」「誰かに笑われたらかわいそう」「人に迷惑をかけるかもしれない」という<善意> や<心配>に根差したものであり、愛情の一種だと言える。しかし、ゾルジャルガル監督は、「だからと言って、障害者を社会から切り離し、家に囲い込もうとするのは真の優しさではない」と、言い切る。人は皆、自分の夢を見つけて実現する過程で、他人と接し、時にぶつかったり怒鳴られたりしながら自己主張する経験が必要だからだ。

 愛し過ぎるがゆえにそうした経験の機会を奪い、可能性の芽を摘み取ってしまうジレンマに陥らないためには、映画を通じて共感を広げることが有効だとゾルジャルガル監督は考えている。監督自身、昔、トランスジェンダーのタイ人ボクサーの映画を見たことで、それまでトランスジェンダーに抱いていた嫌悪感を払しょくできた経験があり、映画には主人公の痛みや夢を追体験させ、ともに歩む機会を与えることができると信じているのだ。

 そんなゾルジャルガル監督は、ゆくゆく「STAIRS」をYouTube上で公開し、諦めず夢を抱き続ける障害者への共感を広げたいと考えている。同時に、手軽にバリアフリーを実践するためのアイデア動画も制作し、シリーズで公開してバリアフリーの機運を高めることも計画中だ。

 「映画は人の考え方を変え、社会をも変える武器になり得るのです」と、目を輝かせるゾルジャルガル監督が、今後、映画の力でどんな社会変革のムーブメントを起こしていくのか、注目したい。

 

映画「STAIRS」公式トレーラー

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