極真の精神で世界に平和を
孤児院育ちから空手に出会い、カチン州に道場を開いたヤクさん

  • 2019/7/10

朝練に響く掛け声
 「イチ! ニ! サン! シ!」「チュウダンヅキ!」 
 ミャンマー最北の地、カチン州ミッチーナ。朝の透き通った空気に包まれた、まだ薄暗い部屋で10数人の子どもたちが鋭い掛け声とともに、力一杯に拳を前に突き出す。ここは、キリスト教系市民団体のYMCAの一角にある、極真空手の道場だ。

掛け声とともに突きの訓練を行うヤクさん(中)と門下生(筆者撮影)

掛け声とともに突きの訓練を行うヤクさん(中)と門下生(筆者撮影)

 カチン民族の道場主、ヤクさんが7年ほど前に開いた道場で、今では100人以上の門下生がいる。下は5歳の子どもから、上は40歳のビジネスマンまでが空手を学ぶ。まず、ランニングやほふく前進、柔軟体操で体を温めてから、空手の指導に入る。ヤクさんが突きや蹴りの見本を見せながら、子どもの構えを直していく。腹筋を鍛える筋トレでは、「もうちょっとだ、頑張れ」とでもいうように声掛けをして子どもたちを奮い立たせていた。訓練の中では、「ゴー」っと音を立てて深く息を吐く呼吸法など極真空手の特徴的な動作も目につく。道場の壁には日本とミャンマーの国旗が掲げられていた。

孤児院から大学へ
 現在29歳のヤクさんの半生は、カチン民族の歴史に翻弄されたものだった。もともとカチン州北部の中国国境近くの村で育った。しかし4歳のころ、ミャンマー国軍とカチン民族の武装組織との内戦が激化し、家族は村から追いやられ、路頭に迷うことになった。若くして父と離婚した母は、病気の影響で足が不自由だった。母は路上で行商するなどしてヤクさんを育てようとしたが、内戦に苦しむカチン州では日銭を稼ぐことも難しかった。「本当に本当に貧しかった。新しい服など買ってもらったことがなかった」とヤクさんは振り返る。そして小学校を卒業するころ、とうとうヤクさんは孤児院に引き取られることとなった。

こじんまりとした道場で柔軟体操を行う門下生ら(筆者撮影)

ページ:

1

2 3

関連記事

 

ランキング

  1.  軍事クーデターの発生からまもなく丸5年が経過しようとしているミャンマーで、昨年12月末から3段…
  2.  5年前にクーデターで政権を奪ったミャンマー国軍が2025年12月末、総選挙を開始した。今月下旬にか…
  3.  日進月歩の人工知能(AI)によって、人間の労働者が大量に置き換えられる日は近い――。そんな研究結果…
  4.  ドットワールドと「8bitNews」のコラボレーションによって2024年9月にスタートした新クロス…
  5.  長年にわたり独裁体制を敷いていたシリアのアサド政権が2024年12月に崩壊して丸1年が経った今、中…

ピックアップ記事

  1.  2021年2月のクーデターで国軍が全権を握ったミャンマーで、今月28日から2026年1月にかけて、…
  2.  2023年10月7日、パレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスがイスラエルへ大規模…
  3.  ドットワールドと「8bitNews」のコラボレーションによって2024年9月にスタートした新クロス…
  4.  日本に住むミャンマー人家族の物語を描いた『僕の帰る場所』や、ベトナム人技能実習生を題材にした『…
  5.  現代アートの世界的な拠点として知られるドイツの首都ベルリンでは、1998年から隔年で現代美術の国際…
ページ上部へ戻る