武装勢力兵士の切ない愛、カチン語で歌う
カチンの人気歌手・俳優のゾードエカウンさん
- 2019/8/18
内戦下の少数民族の思いを色濃く反映
「俺は自由のために戦う兵士。贅沢はさせてあげられないけれど、待っていてくれ」
ミャンマーのカチン州ミッチーナで、カチン族の友人がユーチューブにアップされたひとつのミュージックビデオを教えてくれた。曲名は「解放の日」で歌詞はすべてカチン語(ジンポー語)だ。出征した兵士が故郷の恋人への思いをつづるバラードだが、歌詞でははっきりと表現されていないものの、カチンの人が聞けば誰でも、ミャンマー国軍と激しい内戦を繰り広げている少数民族武装勢力「カチン独立軍(KIA)」のゲリラ兵について表現したものだとわかる。ビデオの内容も、武装勢力の兵士をイメージさせるものだ。
で歌っていたのはミッチーナで活動するカチン族アーチストのゾードエカウンさん(32)だ。なんでも地元では有名な曲で、彼のオリジナル曲ではないという。ゾードエカウンさんは、カチン語の楽曲を歌うほか、カチン語の映画にも出演する。カチン族なら多くの人がピンとくる有名芸能人だ。もともとキリスト教の教会で歌っていたゾードエカウンさんはカチンの有名歌手に誘われて、プロの歌手としてデビューした。その後、ドラマに出演するなどして俳優・監督もこなすようになった。
若者向けのポップミュージックを歌うものの、内容は時折、カチン族の民族感情や社会的状況を色濃く反映する。中には、KIA兵士が主人公のアクションドラマもある。