中国が「南アジア貧困削減センター」を5カ国に設置
ネパールの英字紙「真意は地政学的なバランスの維持か」

  • 2021/8/6

 中国が、「ソフトパワー」で南アジア諸国へ積極的に浸透を図ろうとしている。7月12日付のネパールの英字紙カトマンドゥポストは、この話題を採り上げた。

中国共産党の100周年創立式典で演説する習近平国家主席(2021年7月1日撮影)(c) 新華社/アフロ

インドを除く南アジア諸国で設立

 中国は7月8日、中国南アジア貧困削減開発協力センターをアフガニスタン、バングラデシュ、ネパール、パキスタン、スリランカの5つの南アジア諸国で開設した。社説によると、中国共産党創立100周年の記念事業であり、センターの主な目的は人道的事業だという。社説は、「センターは、南アジアにソフトパワーを浸透させたいという中国の狙いに基づいたものだ。貧困削減は南アジアにとって大きな課題であり、中国の取り組みは確かに理にかなっている」と指摘した上で、「いくつか警告がある」と指摘し、センターの機能に疑問を投げかけた。
 まず、中国の外務大臣が「南アジア諸国の経済成長と生活向上を支援するために力と知恵を集積し、ともに貧困削減に取り組んでいく」と声明を出したことについて、次のように指摘する。
 「南アジアの貧困削減に取り組む組織が、インドを参加させず構想されたことに非現実性を感じる。インドはこの地域で最大の貧困層を抱える国であり、インドの積極的な参加と協力なしに南アジアの貧困削減は実現しない」
 その上で社説は、貧困削減センター事業にインドが入っていないのは、インドとパキスタンの対立によって、地域組織の活動が妨げられていることが一因だという見方を示す。
 「インドはここ数年、ベンガル湾における技術経済協力イニシアチブの推進に注力し、南アジア諸国の協力体制からパキスタンを排除しようとしており、インドとパキスタンの対立が深まっている。こうした状況下で南アジア諸国連合(SAARC)が機能していないことに乗じて、中国はかねてより渇望してきたこの地域への影響力浸透の活路を見出したと言えよう」

中国は誠実な努力を

 社説によると、中国は、貧困削減センター以外にも、緊急物資貯蔵や、貧困削減のための中国・南アジアEコマース協力フォーラムなど、南アジアでの人道的事業の展開をもくろんでいるという。「南アジア諸国は、今後、どのような形で中国と関わるべきか、さまざまな形態が生まれたことになる。しかし、こうした協力関係にとって大切なのは、中国が隣国の貧困削減のために、技術移転や経済支援、人道支援などの面でどれだけ真摯に努力するかということだ」と、社説は指摘する。
 そして、「結局、こうした地域協力の枠組みは、貧困削減や開発といった本来の目的に加え、地政学的なパワーバランスを維持するという目的がある」と、断じる。
 「本来の目的に結果が出るまでには、数十年かかる場合もあるだろう。例えば、2015年に中国とネパールとの間で交わされた貿易と運輸に関する合意は、オリ首相(当時)のイメージアップには役立ったものの、いまだ発効しておらず、実際には何の効果も出ていない」
 社説は当然、新しい貧困削減センターの機能にも懐疑的である。
 「貧困削減センターが成功するか否かは、中国政府がいかに誠実、かつ、具体的な変化を生み出せるかどうかにかかっている。南アジア諸国は、中国が関わる人道支援から得られる利益を素早く刈り取らなければならない」
 インドは、米国、オーストラリア、日本とともに、外交・安全保障の協力体制として「日米豪印4カ国戦略対話」を形成している。これは、米国を中心とする中国包囲網との見方もあり、南アジアは米中対立の最前線になっている。南アジアの経済発展や貧困削減というテーマが、単に米中パワーゲームの「道具」に成り下がらないことを願うばかりだ。

 

(原文https://kathmandupost.com/editorial/2021/07/11/the-proof-of-the-pudding)

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