南アジアでも新型コロナウィルスの感染を確認
ネパールの英字紙も国内の感染拡大を懸念

  • 2020/2/3

世界的流行となっている新型コロナウイルスだが、1月29日現在、南アジアではネパールとスリランカで感染者が確認されている。このうち、1人の感染が確認されたネパールのカトマンズ・ポストは27日の社説で、感染症対策のインフラ整備が必要だと指摘した。

ネパールの首都カトマンズにあるトリブバン国際空港でも1月24日に国内で最初の感染者が確認されてからようやくサーモグラフィー検査が始まった (写真は1月28日撮影)(c) ロイター/アフロ

疑い含め感染は3人に

 社説によると、ネパールで確認された最初の感染者は、武漢から12月に戻ってきた31歳のネパール人留学生だった。その後、さらに男女2人のネパール人の感染が疑われているという。

 今回の新型コロナウイルス感染について、社説は、「われわれは感染の危険にさらされており、政府は感染対策の能力を強化しなくてはならない」と、主張する。なぜなら、ある報道によると、ネパールの玄関口であるトリブバン国際空港のヘルスデスクはからっぽで、世界保健機関(WHO)の警告が出てからあわてて医師が送り込まれた、というお粗末な状態だったからだ。

 社説は、「疑いを含め、国内で3件の感染が発生した今、政府が十分に注意して取り組まなくてはいけないことは明白だ。国内各地の保健関係者は、パンデミックを防ぐために、しっかりとした観察などの予防策が必要だ」と、している。

 そして、グローバル化時代の感染症対策に、同国が極めて脆弱である、と嘆く。「最初の感染は動物から人への感染だった可能性が指摘されているが、今や人から人への感染が始まっている。SARSや鳥インフルエンザ、エボラ出血熱やジカ熱のように、国境を越えて地球規模で広がる感染症は、私たちの健康に深刻なリスクをもたらす」「にも関わらず、ネパールの保健人口省は、恐ろしいほどに準備不足である。新しい病気が発生するたびに、課題が浮き彫りになる」「我々がこうした課題に立ち向かうための力は限られている。政府は、インフラ整備とともに、研究活動にももっと予算を割かなければならない」

喉元過ぎれば……

 ここ10年余りで世界規模の感染症を何度も経験していながら、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」のが、途上国の現状だ。限られた予算や人材ではやむを得ない面もあるが、人やモノが行きかうグローバル化の中で、感染症対策は一国、一地域の問題では済まないことは明白だ。

 今回の新型コロナウイルスの感染拡大も、科学的課題とともに、社会的課題を浮き彫りにしている。カトマンズ・ポストの社説は結びに、「政府がすぐにしなければならない予防策」として、「国民に、適切な情報提供をし、人がたくさん集まる場所を避け、感染の可能性を最小限に抑えることだ」と書いている。政府の対応を批判したタイ・バンコクポストの社説にくらべ、ネパールの社説は、同様に政府の認識の甘さを指摘しているものの、対策がとれないのは「財源がないからだ」とストレートに嘆いた。

 人とモノの動きはこれからますます速く、太くなる。「先進国」は自らを守るためにも、こうした国々への協力を惜しんではならないだろう。ウイルスに国境はない。人類として、ともに闘うしかないのだ。

 

(原文:https://kathmandupost.com/editorial/2020/01/27/cases-of-coronavirus-in-nepal-raises-concerns)

 

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