国際政治に翻弄されるミャンマーの難民
「難民の人権を守るため、国軍に圧力をかけ続けろ」
- 2023/4/7
クーデターで国内の実権を握ったミャンマー軍が、虐待を逃れて隣国バングラデシュで避難生活を送る少数派イスラム教徒ロヒンギャのミャンマーへの帰還を積極的に進める姿勢を見せている。現地からの報道によると、ミャンマー軍は4月半ばまでに帰還事業を開始し、最初は1500人、続いて5000人以上の帰還を受け入れる、としている。
ロヒンギャ難民の早期帰還へプレッシャーを
バングラデシュの英字紙デイリースターは3月16日、「ミャンマーに圧力をかけ続けろ」と題した社説を掲載した。
社説は、3月16日時点でミャンマー軍から17人の代表団がバングラデシュを訪れ、少数派イスラム教徒ロヒンギャの身元を一人ずつ確認していることを冒頭で明らかにした。この動きに対し、社説は「国際社会の圧力が一定の効果を上げている」と評価しながらも、「ロヒンギャが安全に帰還できるようにミャンマー軍が環境を整え、迫害を完全に終わらせる責任を果たすまで、国際社会はアクセルを踏み続けなければならない」と主張した。
社説によると、ミャンマー軍は東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国やバングラデシュ、インド、中国の大使をミャンマー国内のラカイン州に招き現地の状況を見せるなど、帰還に向けて積極的な動きを示しているという。そのうえで社説は、「ミャンマー軍の動きは、一見、前向きなように思われるものの、約75万人のロヒンギャが国軍の弾圧から逃れた2017年以降、ラカイン州への帰還の試みが2度にわたり失敗しているという事実も無視できない」と指摘する。さらに、今回のミャンマー軍の一連の動きが、4月28日に予定されている国際司法裁判所(ICJ)での審問を意識したものではないか、と推測する。というのも、ミャンマーは2019年にロヒンギャへの集団殺害があったとしてガンビアからICJに提訴され、審理が進められている最中だからだ。
社説は、「5年以上にわたってロヒンギャを受け入れてきたバングラデシュとしては、これ以上、帰還の遅れは許容できない状況だ。だからこそ、バングラデシュ政府は国際社会と連携して、帰還を促進するようミャンマー軍に圧力をかけなければならない」と訴えたうえで、「ロヒンギャの人々の安全を確保するという人道的な側面も忘れてはならない」と主張している。
難民の子どもの権利を守って
バングラデシュと同様、ミャンマーと国境を接しているタイの英字紙、バンコクポストも、3月19日付紙面でミャンマーから逃れる難民について取り上げ、「子どもの年難民により良い待遇を」という社説を掲載した。
社説によると、ミャンマーと国境を接する近くにある難民キャンプには、9万6000人あまりが紛争や迫害を逃れてきており、その半数が子どもたちだという。一向に改善されないミャンマーの状況を見れば、今後もその数が増えることは想像に難くない。
また、首都バンコクにも国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に認定された難民が約5000人いる。しかし、難民がみな認定を受けているわけではない。「ロヒンギャや北朝鮮からの脱北者のように、母国での迫害を逃れた人たちの多くは、国際的な難民保護システムから外れている」と、社説は指摘する。こうした人々の多くを占めるのも子どもたちであり、彼らは常に虐待や搾取の危険にさらされているという。
社説は、タイ政府が国際条約である子どもの権利条約を批准していながら、難民や難民となり得る子どもの保護を目的とする第22条の遵守を拒んでいる、と批判。「助けを求める子どもたちのために、一刻も早く正しい行動を起こすべきだ」と主張している。
(原文)
バングラデシュ:
https://www.thedailystar.net/opinion/editorial/news/keep-the-pressure-myanmar-3272841
タイ:
https://www.bangkokpost.com/opinion/opinion/2531336/child-refugees-deserve-better