南インドで「伝統」の餌食になる女性たち
伝統の名の下に女性虐待を正当化する社会を問い直す

  • 2024/2/29

 古いしきたりや伝統的な考え方には、自然との共存や生活の知恵など、今の時代だからこそ、その奥深さが見直されるものも多い。しかし、社会の変化に逆行する「時代遅れ」の慣習もある。その最たるものの一つが、女性の人権にまつわる因習だ。

Sneha Sivarajan / Unsplash

女性の迫害が続くネパール、解決の糸口はどこに

 ネパールの英字紙カトマンドゥ・ポストは224年1月17日付の社説で、「ネパールの女性は、時代遅れの“伝統”の名の下に、迫害され続けている」と主張した。

社説によると、ネパールでは2023年にある動画が物議をかもした。4人の男たちが、白昼、道路の真ん中で少女を暴行している動画で、少女の意思を無視して結婚させる「Taani Bibaha」という「時代遅れの文化的慣習」として行われたものだったという。

 動画の少女が警察に訴え出たため、加害者は処罰されたが、そうしたケースは大変珍しい、と社説はいう。「少女たちはこのような行為に疑問を持つことを恐れている。たとえ告訴したとしても、伝統を守るという名目で、罪を犯した者が法的に罰せられることはめったにない」

 社説はこうした現状について「ネパールの若い少女たちは、家父長的な伝統の餌食になり続けている」と指摘する。同紙が調査したところ、同じ地区の179人の少女のうち、なんと8割以上が伝統的習慣の名の下で、男性に性的虐待を受けていたことがわかったという。

 「ネパールの男性の多くは、女性の同意などお構いなしに、好き勝手に女性を虐待する。家父長制的価値観は、児童婚、持参金、女性略奪、家庭内暴力、レイプ、誘拐などの形で現れる。身体的にはもちろん、精神的にも深い傷をもたらすものだ。被害者が自ら命を絶つケースもある」

 ただ、こうした「時代遅れの伝統」を排除することは簡単ではない。社説によれば、ネパール西部で「月経小屋」を解体しようという取り組みがあったが、「惨憺(さんたん)たる結果に終わった」という。これは、「外部からの押し付け」だと地元の人々が感じたためだ、と社説は分析する。

 社説は、こうした女性の人権侵害を解決するにあたっては、地域レベルでの取り組みと、厳格な法執行、そして少女たち自身を教育することが大切だという。しかし、「凝り固まった家父長制と闘うとなると、社会を占める大多数の人々の協力が不可欠だ。少女たちだけにすべてを負わせるのは、あまりにも酷だ」と述べ、すべての人の意識改革を求めている。

夫への奉仕は妻の義務?インドの裁判所が重んじた「文化」

 隣国のインドでも、女性の人権は社会変革の課題になっている。今年、総選挙を迎えるインドでは、女性の有権者が男性の有権者数を上回っていることや、女性の候補者を増やそうとしていることなどから、「女性の力」に焦点が当たっているのだ。

 インドの英字メディア、タイムズ・オブ・インディアは2024年1月26日付の社説で、女性の権利と義務を話題にした。

 社説は、1月下旬、ジャールカンド州の高等裁判所が、「妻が、夫の母や祖母に奉仕することは義務であり、別居を不合理に要求してはならない」との見解を示したことに注目。「裁判所は事実を追求するかわりに、主観的な道徳を拡散している」と問題視した。

 社説はほかにも、ケララ州高等法院の判決が「妻に家事全般をさせることや虐待することは珍しいことではない」と示唆したことなどを指摘。「裁判所は、こうした不合理な扱いを『文化』としてただ受け入れるように、と女性に言い続けているのだ」と、主張した。

 そのうえで社説は裁判所に対し、「インド憲法という『文化』をどう考えるのか」と問う。憲法では、男性と女性の平等、自由への権利が保障されている。「法廷に立つ女性は、不当な社会規範に屈することなく、闘う勇気と支援を見出した少数派だ。裁判官はそのことを忘れてはならない」

 

(原文)

ネパール:

https://kathmandupost.com/editorial/2024/01/17/the-weight-of-patriarchy

インド:

https://timesofindia.indiatimes.com/blogs/toi-editorials/republics-women/

 

 

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