債務不履行に陥ったスリランカ
現地とバングラデシュではどう報じられたか
- 2022/5/2
スリランカは4月12日、総額510億ドル(約6兆6190億7850万円)の対外債務の一部支払いを停止し、債務不履行に陥った。深刻な経済危機は生活必需品や電力の不足を招き、国民生活が極めて不安定になったことから、各地で抗議活動が頻発。4月19日にはデモ隊と警察が衝突し、犠牲者も出た。
「新閣僚は業績本意の行動を」
現地からの報道によると、スリランカでは物価が高騰し、長時間に及ぶ大規模な停電が発生。食料や燃料、医薬品などの生活必需品も不足しており、1948年に英国から独立して以来、最悪の経済危機だと言われている。同国では、新型コロナの感染拡大によって主要産業の一つである観光業が深刻な打撃を受けた上、国際的な経済低迷により縫製品などの輸出業も影響を受けた。こうした状況を受け、適切な経済政策で乗り切ることができない政府に対して、もともと不正や腐敗を巡り蓄積されていた国民の怒りが爆発したという。
債務不履行に先立ち、4月初旬には、ゴダバヤ・ラジャパクサ大統領と、実兄のマヒンダ・ラジャパクサ首相を除く26閣僚全員が辞表を提出。ラジャパクサ大統領は同18日、17人の新閣僚を任命したものの、大統領とその一族の辞任を求める抗議活動は収まらず、混乱が続いている。
スリランカの英字紙デイリー・ニューズは4月19日、新閣僚の指名を受けて「新たな一歩」と題する社説を掲載した。それによれば、新閣僚はそれまで30余りあったポストが17に減らされたという。社説は「これまでは産業省とは別に縫製業省があったように、ポストの重複や無駄があったが、ある程度は是正された」と、一定の評価をしている。
その一方で、「新閣僚には、辞任した前閣僚のように保身に走って問題解決もせず無為に過ごすのではなく、業績本意の行動を求めたい」として、改革の必要性を厳しく指摘している。
他山の石として遅きに失しない対応を
スリランカの状態を「他山の石」とするのは、バングラデシュだ。同国の英字紙デイリー・スターは、4月5日の社説でこの問題を採り上げた。
「われわれは、スリランカで起きていることに心を痛めている。長年にわたる失策とネポティズムに加え、新型コロナの感染拡大と国際的な経済不安、そしてロシアによるウクライナ侵攻が相まって、スリランカ経済は最悪の状態に陥った。深刻な危機に直面するスリランカに深く同情する」
社説はスリランカの危機を招いた原因をこう分析したうえで、「スリランカで、今、起きていることは、バングラデシュにとっても強い教訓となる」という専門家の指摘を紹介した。
「バングラデシュもスリランカと同じような課題を多く抱えている。われわれの政府がそのことに気づき、遅きに失しない対応能力を持ち合わせていることを祈るばかりだ」
同紙は、バングラデシュがスリランカと同じ危機に陥らないためには、政権の上層部が人々の声や懸念を受け止める努力をすることはもちろん、マクロ経済の安定も必要だと指摘。「輸出の多様化が急務だ」と、主張している。
(原文)
スリランカ:
https://www.dailynews.lk/2022/04/19/editorial/277167/fresh-beginning
バングラデシュ:
https://www.thedailystar.net/views/editorial/news/real-tragedy-unfolding-sri-lanka-2998051