ネパール女性たちの命運握る米政権
地元紙が中絶禁止のリスクを指摘

  • 2021/2/12

 米国のトランプ前政権が女性の中絶を禁止する政策を発表し、世界中の開発途上国の女性たちの健康を脅かしていたことをご存知だろうか。1月24日付のネパールの英字紙カトマンドゥ・ポストは、社説でこの問題を採り上げた。

トランプ前米大統領が出した中絶を禁止する法律によってネパールの女性たちが苦しめられてきたと社説は指摘する (c) freestocks.org / Pexels

メキシコシティ政策の行方

 2017年1月、米国のトランプ前大統領は、「メキシコシティ政策(グローバルギャグルール)」を発令した。これは、国外で米国の資金援助を受けているNGOが中絶手術を実施したり、中絶に関する相談を受けたり、中絶を促したりすることを規制し、それらに資金を利用してはならない、とする政策だ。

 社説は、この政策によってネパールの女性たちが多大な影響を受けたと指摘した。

 「ネパールの重要な開発パートナーである米国国際開発庁(USAID)は、中絶手術や相談サービスを実施しているNGOへの資金供与を停止した。国際NGOのMSIリプロダクティブ・チョイスによると、この政策は、望まない妊娠や危険な中絶手術に苦しむ途上国の女性たちに非常に厳しい結果をもたらした」という。

 社説は、2019年にバズフィードニュースとの協力で作成した報告や、コロナ禍で実施された調査研究をもとに、ネパールの女性たちにとってメキシコシティ政策がいかに破壊的な影響をもたらしたか説明している。

 「この政策によって資金供与がなくなり、国内の10数地区でスタッフが解雇され、クリニックは閉鎖された。これにより、女性たちが妊娠や出産について相談する場所が奪われ、予期せぬ妊娠や危険な中絶手術、出産時の母親の死亡といった問題がより深刻化した」

 社説によれば、この政策が発令された当初、国内の11地区で中絶や妊娠の相談を受けていたクリニックが閉鎖され、その後、さらに11地区で閉鎖されたという。同じころ、アメリカからの資金が絶たれることを懸念し、避妊や家族計画、HIV/エイズに関する啓発活動も行われなくなったという。

情報の空白地帯

 「この政策がもたらした最大の問題は、中絶は悪だという烙印を押し、女性の健康について情報の空白地帯が生まれてしまったことだ。特に、ネパールの農村地帯ではその傾向が強まった。その結果、女性と子どもたちの生命は危険にさらされ、命を落とす人たちも出た。女性たちは、自分自身の体と出産に関する法的な権利を行使することもできないでいる」

 社説は、2016年のネパールの「人口と保健調査」を基に、女性たちが安全な中絶するためにお金も時間もかけなければならない実情を指摘し、「中絶を合法化しているネパールでこのような状況は受け入れがたい」と、批判する。

 「女性たちは、危険な手術を受けて状況を複雑にするべきではない。ある調査によると、安全な中絶手術を受けているのは全体の半分以下で、あとの女性たちは非公認のクリニックやヘルスワーカーのもとで手術を受けているという。政府は、中絶やリプロダクティブ・ヘルスについてもっと啓発活動をしなくてはならない。女性たちがもっと簡単に情報や保健システムにアクセスできるようにしなければならない。誤った政策によって、失われなくてもいい命が失われている。国内でも国外でも、中絶を禁止するだけではなくならないということが証明されている。規制は女性たちをより苦しめるだけだ」

 社説は、今年1月に米国で誕生したバイデン新政権がこの政策を破棄するだろう、と期待を寄せ、「再び多くの資金が多くの女性たちの命を救うサービスに提供されることになるだろう」と期待を寄せる。他方、社説は「バイデン氏の次の米政権がどう判断するのかは未知数だ」との見方も示す。米国の政策にネパールの(あるいは世界の)女性たちの命運が握られている。これが現実だ。

 

(原文: https://kathmandupost.com/editorial/2021/01/24/lifeline-for-women)

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