パレスチナ問題をめぐる国際機関の意義と限界
アジアの英字紙に見る期待と無力感
- 2024/6/24
イスラエルによるイスラム組織ハマスに対する軍事作戦は、解決の糸口が見えぬまま長期にわたっており、多数の犠牲者を出し続けている。子どもを含む多くの非戦闘員の殺害など、イスラエルに対する非難が高まる中で、国際機関が動きを見せている。各国のメディアが国際機関に抱く期待と、無力感はさまざまだ。

米ニューヨークで開催された国連総会で、パレスチナを正式な国連加盟国と認める決議案の採決を終えて代表団に迎えられるリヤド・マンスール駐国連パレスチナ大使(中央右)(2024年5月10日撮影)(c) ロイター/アフロ
世界最大のイスラム教徒を抱えるインドネシアの英字紙ジャカルタポストは、国連総会が5月10日、パレスチナの代表権を認めることを圧倒的多数で可決したことを伝えた。
国連総会に提出された決議案は、現在、国連で「オブザーバー」の地位にあるパレスチナについて、正式な加盟に向け安全保障理事会で協議するよう求めている。これに対し、日本を含む143カ国が賛成し、イギリスなど25カ国が棄権、アメリカとイスラエルなど9カ国が反対した。ただ、国連加盟に必要な安全保障理事会での勧告決議は、アメリカが拒否権を行使したことから得られておらず、現状ではパレスチナの国連加盟は実現しない。
同紙の5月20日付の社説は、国連総会での決議について、「フランスやオーストラリアなど、イスラエルによるガザ侵攻作戦を政府が支持している国が賛成に回ったことは興味深い」としたうえで、「大量虐殺の終結を求める国内世論に応えたのだろう」との見方を示す。
また同紙は、米国の動きに注目し、次のように述べる。「イスラエルとその主要な後ろ盾であるアメリカは、国際世論がイスラエル非難に傾いていることを受けて孤立を深めている。米国が拒否権を行使し続ければ、ワシントンは世界から孤立するだけでなく、世界のリーダーとしての地位も失墜するだろう。特に、反ユダヤ主義という言葉を拡大解釈し、イスラエル国家を批判することさえ事実上犯罪とする法律を制定した後ではなおさらだ」
これは、5月初めに下院を通過した「反ユダヤ主義啓発法案」を指していると見られる。社説はさらに「米政府がイスラエルへの武装をやめるように求める学生の抗議デモやキャンパスでの野営を、いくつかの大学で暴力的に解散させた」とも批判している。
そのうえで社説は、「パレスチナは今や、国連における発言権を保障された。世界中の人々がガザ作戦を終わらせるだけでなく、パレスチナの人々に尊厳と国家としての権利を与える必要性を認識している」と主張している。
ネタニヤフ首相らへの逮捕状請求を評価するパキスタン紙
一方、パキスタンの英字紙ドーンは5月22日付で「イスラエルの責任を問う」と題した社説を掲載した。
社説では、国際刑事裁判所(ICC)のカーン主任建設官が5月21日、イスラエルのネタニヤフ首相や、ハマスのガザ地区トップのシンワル指導者など、双方の5人に逮捕状を請求すると明らかにしたことを受けて、「南アフリカが国際司法裁判所でイスラエルに対するジェノサイドの手続きを開始したことに続き、彼らの残虐性の責任を問う大きな取り組みだ」と評価した。
さらに社説は、これらの国際組織がロシアのプーチン大統領らにも逮捕状を出したにも関わらず、いまだに法廷に立たせることができていないことを指摘し、「今回も関係者が法廷に立つことは難しいだろう」との見方を示す。それでも、「ガザの人々を苦しめた者たちを国際的な法制度によって罰することはできないかもしれないが、歴史はすでにパレスチナの子どもたちに有利な審判を下している」と記している。
インド紙は世界秩序に対する国際機関の無力さに言及
インドの英字メディア、タイムズオブインディアも5月22日付の社説で国際刑事裁判所の話題をとりあげた。こちらは、「国際刑事裁判所は、分断された地政学における国際機関の限界を示す好例だ」と指摘し、その機能に限界があることを強調している。
社説は、現在の国際情勢について「世界秩序は階層的なものとなった」と指摘。国連の安保理常任理事国である5カ国が、秩序を維持する第一の責任を負うと同時に排他的拒否権を持っていることで、「秩序を乱すことにつながった」と述べた。「世界の秩序が事実上、常任理事国5カ国に握られ、多国間機関は、国連であれ、そのほかの機関であれほとんど機能していない」と、そのの眼差しは非常に厳しい。
(原文)
インドネシア:
https://www.thejakartapost.com/opinion/2024/05/20/speak-up-for-the-palestinians.html
パキスタン:
https://www.dawn.com/news/1834974/holding-israel-accountable
インド: