悪化するアジアの都市環境問題を考える
危機感を募らせるアジアの社説を読む

  • 2022/10/17

 急速に発展するアジアの都市では、同時に様々な社会問題が発生している。そのうちの一つが、ゴミや汚水の問題だ。

バングラデシュでもゴミ問題は深刻化している (c) kelly /Pexels

タイはゴミの減量を訴え

 バンコクでは9月半ば、長い間、一世帯当たり月額20バーツだったゴミの収集料金が、80バーツに引き上げられた。9月26日付のタイの英字紙バンコク・ポストは、社説でこの話題を採り上げた。

 社説は、「20バーツは実際にかかるゴミ収集コストを考えれば、確かに安すぎた」と、値上げに理解を示す。80バーツへの引き上げで、バンコク都のゴミ収集予算は月に2億4,000万バーツの増収となる。その一方で、社説は「物価高が生活を圧迫する今、値上げは必ずしも良いタイミングとは言えない」とも指摘する。

 ゴミ収集のコスト負担をこれ以上増やさないために社説が求めるのは、ゴミを減らす努力だ。

 社説は「バンコク都民が一日に排出するゴミは、1人あたり4キロに上る」と指摘した上で、「シンガポールでは1人あたり2.2キロにとどまっている。バンコク都民はこの差を認識し、ゴミを減らす工夫をしなければならない」と訴える。

 「ゴミの減量に向けた取り組みは、ゴミ収集や埋め立て地や焼却場ではなく、まず、家庭やオフィスで始めなければならない。住民一人一人がゴミの減量に重要な役割を果たしていることを、どうやってバンコク都民に認識させるかが問題だ。都当局は、啓発活動に加え、リサイクルをしやすくする環境づくりに取り組む必要がある」

下水処理の徹底を求めるバングラデシュ

 バングラデシュでは、9月25日の「世界川の日」を機に、首都ダッカの汚水排出への関心が高まっている。9月26日付のバングラデシュの英字紙デイリースターは、社説でこの問題を採り上げた。

 社説によれば、バングラデシュの国家河川保全委員会はこのほど、ダッカ上水道公社などが汚水を首都周辺の河川に、直接、排出していることを問題視し、改善を求めたという。本来、処理施設を通さなければならない下水が、雨水とともに河川に直接、流れ込んでいるという。

 「政府はこの問題を緊急に解決しなければならない。河川の環境保全について見ると、事実上、関係するすべての政府機関が十分に機能していないため、ダッカに限らず、全国各地で同じような問題が起きている。政府はすべての関係機関とその責任者たちをしっかりと指導するべきだ。特にダッカでは、上下水道公社のトップに責任があることは明らかだ」

シンガポールはゼロ・エミッションを呼びかけ

 シンガポールの英字紙ストレーツタイムズは、9月26日付の紙面で、「ゼロ・エミッションを真剣に考えるべきだ」との社説を掲載した。

 ゼロ・エミッションとは、これまで廃棄物としてきたゴミを原材料などとして活用することで再生させ、廃棄物を一切出さない資源循環型の社会システムのことを指す。社説は、「世界各地で気候変動による天候や環境の変化との闘いが繰り広げられている」と指摘した上で、「世界がゼロ・エミッションへの取り組みをさらに強化するべきだ」と主張する。特に真剣な取り組みが必要なのは、化石燃料から出る温暖化ガス排出の削減だという。

 また社説は、シンガポールのDBS銀行が今年9月、電力や石油・ガスなど、温暖化ガス排出量の多い融資先9業種ごとの「脱炭素計画」を公表したことを高く評価した。東南アジア諸国の銀行でこのような取り組みを発表したのはDBS銀行が初だという。

 「多くの政府や大企業が、ゼロ・エミッションを約束している。次は、具体的なアクションプランを検討し、発表すべきだ。簡単なことではないが、気候変動は今、それだけ危機的なレベルに達しているのだ」と、社説は訴えている。

 

(原文)

タイ:https://www.bangkokpost.com/opinion/opinion/2401118/time-to-fix-citys-trash

 

バングラデシュ:https://www.thedailystar.net/opinion/editorial/news/make-dhaka-river-authorities-accountable-3128691

 

シンガポール:https://www.straitstimes.com/opinion/st-editorial/get-serious-about-net-zero-emissions

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