パキスタンはインドからの変異株流入をどう防ぐか
地元紙が社説でインドからの流入阻止を訴え

  • 2021/5/22

 パキスタンの英字紙ドーンは、4月29日付の社説で同国の新型コロナ対策について採り上げた。隣国インドでは、変異株の影響で1日30万人を超える新規感染者が出ている。社説は、どうしたらパキスタンが同じ状態に陥ることを防ぐことができるかを論じている。

パキスタンでは、隣国インドからの変異株の流入阻止が喫緊の課題となっている (c) AaDil / Pexels

防疫措置に軍隊を動員

 同紙をはじめ、パキスタン国内の各メディアは連日、新型コロナの感染拡大で悲惨な状況が広がるインドの様子を伝えている。社説は、パキスタンが間もなく、新型コロナの感染拡大が深刻なインドからの感染流入を防ぐために国境で特別な防疫措置を開始すると報じた。
 「数日前、カーン首相は警察が実施している感染予防対策の強化するために国軍を動員すると発表した。マスクの着用やソーシャルディスタンスの確保、手指の消毒など、新型コロナの感染拡大を予防するための標準行動手順(SOPs)を徹底するために、軍が警察を補助するということだ。行政の業務執行のために軍を動員することの意味は甚大で残念なことではあるものの、この危機的な状況ではやむを得ない。あらゆる指標は状況の悪化を示している。今、特別体制で警戒にあたることで、わが国が最悪の事態に見舞われ医療が崩壊することが避けられるかもしれない」
 市民生活に軍が入り込んで予防策の徹底を図るという異常事態に対し、社説は「やむを得ない」との見方を示す。それだけ隣国インドの感染状況がショッキングなものだということだろう。
 その上で社説は、感染の悪化を懸念する。
 「米国を拠点とする研究機関が、現在のペースで感染が拡大した場合の予測を発表したところによると、パキスタンでは8月1日までに新型コロナによる死亡者が1万7500人から2万8500人に増加するという。実際、4月27日の1日だけで201人が亡くなった。これは、新型コロナの感染が拡大し始めてから最多の数字だ」

立ちはだかるワクチンへの不信感

 それでも社説は「事態はまだ最悪ではない」とした上で、「国内では、医療用酸素を十分に確保しようと努力が続いている。病院も、公立か私立かを問わず、緊急ではない手術は延期して備えようという動きが広まっている」と、指摘する。
 とはいえ、パンデミックを食い止めるカギを握ると言われているワクチン接種については、芳しい状況ではない。
 「予防は治療に勝るといわれる通り、ワクチン接種は重点的に実施されなければならない。だが、ワクチンの入手以前に、人々の関心の低さが問題だ。健康に関する特別補佐官であるドクター・ファイサル・スルタンによると、3月30日から今日までに300万回分のワクチンがパキスタンに届いているほか、さらに300万回分も契約済みだという。4月下旬の日曜には、100万回分のワクチンが中国からも届いた。インドの惨状を知って、ワクチン接種に対する関心がようやく高まり始め、4月27日には1日で11万7852人がワクチンを接種した。一日の接種者が10万人を超えたのはこの日が初めてだ」
 それでも、感染抑圧までの道のりは遠い。
 「これまでに210万人がワクチンを接種したが、いまだ人口の1%に過ぎない。接種のための登録率も依然として低く、国民に広がるワクチンへの不信感を拭い去るには現在の啓発キャンペーンでは不十分なのは明らかだ。国軍もSOPsの実施に加わってワクチン接種が進めば、インドのような惨状を防ぐことはまだ可能だ」
 恐ろしい足音を聞きながらも、社説は「まだ間に合う」との期待を示す。とはいえ、その時間は決して長くない。

 

(原文:https://www.dawn.com/news/1620985/army-deployment)

関連記事

 

ランキング

  1.  ドイツ・ベルリンで2年に1度、開催される鉄道の国際見本市「イノトランス」には、開発されたばかりの最…
  2.  今年秋、中国の高速鉄道の総延長距離が3万マイル(4.83万キロ)を超えた。最高指導者の習近平氏は、…
  3.  日本で暮らすミャンマー人が急増しています。出入国在留管理庁のデータによると、2021年12月に3万…
  4.  ドットワールドとインターネット上のニュースサイト「8bitNews」のコラボレーションによって20…
  5.  11月5日に投開票が行われた米大統領選挙では、接戦という事前の予想を覆して共和党のドナルド・トラン…

ピックアップ記事

  1.  11月5日に投開票が行われた米大統領選でトランプ氏が再選したことによって、国際情勢、特に台湾海峡の…
  2.  ジャーナリストの玉本英子さん(アジアプレス・インターナショナル)が10月26日、東京・青山で戦火の…
  3.  ドットワールドと「8bitNews」のコラボレーションによって2024年9月にスタートした新クロス…
  4.  米国・ニューヨークで国連総会が開催されている最中の9月25日早朝、中国の大陸間弾道ミサイル(ICB…
  5.  「すべてを我慢して、ただ食って、寝て、排泄して・・・それで『生きている』って言えるのか?」  パ…
ページ上部へ戻る