緊迫するガザ情勢をイスラム諸国はどう見るか
イスラエルを後押しする西側諸国への憤りあらわに

  • 2023/11/27

 パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルとの武力衝突は、双方に甚大な被害をもたらしている。衝突が拡大の一途をたどり、解決の糸口すら見えなかった10月末現在、アジアのイスラム諸国はこの状況をどう報じていたのか(*編集部注:ハマスとイスラエルは11月22日、戦闘を4日間やめることと引き換えにガザ地区で拘束されている50人の人質を解放することで合意。24日に一時停戦が発効し、双方の人質の解放が少しずつ続いている)。

イスラエルによる空爆後のガザ市エル・レマル地区(2023年10月10日撮影)©️Palestinian News & Information Agency (Wafa) in contract with APAimages / Wikimedia commons

ハマスの攻撃は積年の怒りの爆発だと見るパキスタン

 パキスタンの英字紙ドーンは、10月29日付で「ガザの黙示録」と題した社説を掲載した。

 社説は冒頭で、「ハマスがイスラエルを襲撃した10月7日以来、イスラエルの報復によって7000人以上のパレスチナ人が殺戮された」と指摘。そのうえで、「その半数近くは幼い子どもたちだ。イスラエルは容赦なく一家を皆殺しにしたばかりか、市民のインフラを標的にし、ガザへの食料や水の輸送と、通信回線、電力、燃料を遮断した。これらすべてが戦争犯罪だ」と述べ、イスラエルを強く非難した。

 さらに、「パレスチナ市民に対するイスラエルの大量虐殺的な武力行使を後押ししているのは、西側諸国の盲目的な支援だ」と述べ、「イスラエルとその友人である西側の政府機関やメディアは、この紛争に歪んだ構図を当てはめている。アラブ・イスラエル間の紛争は、今回のハマスの襲撃を機に始まったわけではない。何十年もの間、パレスチナ人は日常的に死に直面し、屈辱を味わい、先祖代々受け継がれた土地を強奪されてきた。双方が民間人を標的にしたことは非難に値するが、10月7日は、長年にわたり蓄積された怒りが爆発したと見なければならない」と指摘。西側諸国に対する憤りをあらわにした。

 そのうえで社説は、イスラエルに対して「血なまぐさい作戦を終結させよ」と呼びかけ、こう警告した。「イスラエルが無慈悲な攻撃を続け、西側諸国がそれを援助し続ければ、中東は爆発し、その余波は世界中に及ぶだろう」

バングラデシュは停戦決議を拒否する西側諸国を批判

 バングラデシュの英字紙デイリースターは10月25日付の紙面に、人道的な視点からイスラエルとその同盟国の行動を強く非難する社説を掲載した。

 「驚異的な人数の子どもが犠牲になっていることについて、国連児童基金(ユニセフ)は“人類の良心の上に広がり続ける汚点”だと断じ、即時停戦とガザ地区への無制限の人道アクセスを求めている。わずか3週間足らず(編集部注:社説掲載時点)の間に、約2360人の子どもたちが殺され、5364人が負傷しているのだ」と、社説は訴える。そして、「即時停戦が喫緊に必要であることは誰の目にも明らかであるにも関わらず、世界の指導者たちは国連安全保障理事会で停戦決議に拒否権を行使し、抵抗し続けている」として、アメリカの拒否権行使を非難した。

 社説によれば、ガザ地区の住民の8割は、今回の戦争が勃発する前から生活を国際援助に頼っていたにも関わらず、イスラエルは国連職員に対してビザの発給を停止するなど、人道支援を遮断している。社説はこれを強く批判したうえで、「世界の指導者たち、特にイスラエルの同盟国の指導者たちよ、私たちがあなた方の言動を注視していることを忘れてはならない」と、結んだ。

 バングラデシュは国民の85%がイスラム教徒であるが、この社説は前出のパキスタンの社説とは対照的に、地域の歴史的な背景や宗教的な問題には一切言及せず、目の前の人道危機への対応について、世界の指導者の姿勢を問うている。

2つの国家の共存を訴えるインドネシア

 世界最大のムスリム人口を抱えるインドネシアの英字紙ジャカルタポストも10月11日、「目には目を、の報復は終わりに」と題した社説を掲載した。

 社説は、インドネシアの外務省が今回の新たな戦争勃発について、イスラエルとパレスチナ双方を非難することは控えたうえで、暴力の激化に深い懸念を表明し、これ以上の人的被害を出さないよう即時停戦を促したと伝えている。その一方で、「イスラエルがパレスチナ領土を占領していることが根本的な原因だ。この問題は国連の合意のもとで解決されなければならない」という声明も出している。

 そのうえで社説は、当事者双方に対して歩み寄りを求め、こう呼びかけている。「インドネシアは、30年前のオスロ合意で決められた通りに、2つの国家の共存という解決策によって、この数十年来の戦争を終わらせることを支持する。目には目を、という宗教的教義は、中東政治に適応されてはならないのだ。イスラエルは軍事力と経済力だけでパレスチナとの戦争に真の意味で勝つことはできない。同じようにパレスチナ人も、“イスラエルという国を地図上から消す”、などという悪意ある意図をあきらめ、妥協しなければならない」

 

(原文)

パキスタン:

https://www.dawn.com/news/1784663/Gazan-apocalypse

バングラデシュ:

https://www.thedailystar.net/opinion/editorial/news/israels-allies-must-see-the-moral-imperative-ceasefire-3452626

インドネシア:

https://www.thejakartapost.com/opinion/2023/10/11/no-more-eye-for-eye.html

 

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