パキスタン女性の政治参加は実現するか
民主的な意思決定の実現を阻む古い慣習
- 2020/7/11
女性の社会的地位向上が叫ばれるようになって久しいが、先進工業国であれ、新興国であれ、宗教を問わず、世界は依然としてこの問題に直面し続けている。国民のほとんどがイスラム教徒であるパキスタンでも、女性の参政権を保証しようという活動がある。7月6日付のパキスタンの英字紙ドーンは、この問題を取り上げている。
女性議員比率は20%
国際団体「列国議員同盟」によれば、パキスタンの国民議会(下院)に占める女性議員の比率は約20%であり、世界平均の24.9%を下回っているという。
この状況を改善するために、パキスタン政府はさまざまな取り組みを進めている。社説は、パキスタンの選挙管理委員会がこのほどすべての州の選挙委員会に女性選挙委員を最低一人は入れることを義務付けたことを伝えた上で、「この決定は称賛に値する。より多くの女性が選挙に携わり、民主的な意思決定の強化につながると期待したい」と、述べる。
さらに社説は、パキスタンでは憲法上は女性の投票権が保証されているものの、投票日に投票所に現れる女性は、男性に比べて極端に少ないと指摘する。「人口の半分は女性であるにも関わらず、パキスタンの女性は、文化的な習慣によって二級国民として扱われているのが現状だ。この国には、健康、教育、収入、寿命――人生のあらゆる場面において女性が差別される文化が根強く残っているのだ」
遠い道のり
その上で社説は、「より多くの女性が有権者として、さらに候補者として政治に関わるようになれば、国会で審議が先延ばしになっている女性の権利に関する法律や、女性の社会的地位の向上を実現するような法律の策定増加にもつながる」と、指摘する。
パキスタンでは、2017年の選挙法によって、女性の政治参加に道を開く新しい方法が導入された。例えば、女性の投票が10%を下回った選挙区では投票をやり直すことが決定されたほか、女性の投票や立候補を妨害する行為は違法とされた。また、全政党に女性候補者を最低5%は入れることを義務付けた上、女性有権者が投票に来やすいよう、女性のための投票所の設営も奨励している。
こうした取り組みが奏功し、前回の総選挙では女性の投票率に上昇がみられたという。社説も、「政府の対策はある程度成功しているようにみえる」と評価した上で、「古い慣習が打ち破られるまでにはまだ長い時間とたゆみない努力が必要だ」との見方を示す。その根拠として挙げられているのが、「2018年の選挙で女性の立候補者は増えたものの、当選した女性議員数は減った」という女性の地位委員会の報告書だ。
パキスタンの進む道は遠い。しかし、冒頭の「列国議員同盟」の調査によると、日本の国会議員に占める女性比率はわずか9.9%だという。考えるべきことは、ごく身近にもある。
(原文:https://www.dawn.com/news/1567280/women-and-the-vote)