気候変動に見舞われる南アジアの悲鳴
温暖化がおよぼす経済社会活動への負の影響

  • 2022/5/18

 地球規模の気候変動は毎年、世界各地にさまざまな自然災害を「これまでとは違う形で」もたらしている。人々は従来、伝統的な知恵で自然災害と共存してきたが、それが通用しなくなっているという。特に、新興国では人々の暮らしや経済活動への影響が大きい。

(c) Omer Faruq Khan / Pexels

「殺人的な熱波」に襲われるパキスタン

 「殺人的な熱波」に襲われているパキスタンの英字紙ドーンは、4月30日付の社説で、今年の異常な暑さを採り上げた。
 2022年4月、南アジアは前例のないほどの熱波に見舞われている。社説によれば、平均気温は平年よりも6度から8度高く、40度を超える日もある。また、降水量が例年の6割ほど少なく、このままでいけばダムや河川の水不足は明らかだという。
 「南アジアを襲っている早い夏は、今年は特に激しい。これに加え、パキスタンでは電力不足にも見舞われており、穀物の生育にも悪影響がおよんでいる」。パキスタン南部シンド州のナワーブシャーでは、4月に世界の最高気温となる50度を記録したという。
 「パキスタンの経済活動によって地球温暖化が引き起こされているのかといえば、それは限定的かもしれない。しかし、わが国が温暖化の悪影響が最も甚大な国の一つであることは間違いない」
 社説は、政府の気候変動省に対し、人命や農業など、経済活動をも危機にさらす地球温暖化の悪影響を少しでも和らげるために、地方当局と連携して技術的な支援もすべきだ、と主張する。また、具体的には、緑地を増やし、人々が暑さをしのげる場所を作るなどの施策も必要だとしている。

バングラデシュは水害の深刻化に危機感

 突発的な鉄砲水に悩まされているバングラデシュでは、英字紙デイリースターが4月12日付の社説でこの問題を採り上げた。
 バングラデシュ国内では4月、北東部のシレットや北部マイメンシン管区で、通常よりも早い時期の鉄砲水が発生し、収穫前の穀物に深刻な打撃を与えている。
 「鉄砲水が通常よりも早く発生する現象はここ5~6年続いており、2017年や2019年にも、穀物生産や養殖業、養鶏業が被害を受けた。しかし、今年の鉄砲水はそれ以上に深刻で、家畜や海産物にも影響を及ぼしそうだ」
 これらの地域では、鉄砲水そのものは珍しいことではない。古来より、季節が巡って来るたびにこの土地の人々は水害に見舞われることも織り込みながら、農業や暮らしを続けてきた。また、その規模や時期を予想し、堤防の建設もしてきたという。しかし、水害の時期や規模が変化したことによって、「既存の堤防では十分ではない」状態になっている、と社説は指摘する。
 「堤防を作ってさえいればいい、という考え方から、河川の浚渫工事など、より根本的な対策が必要だという考え方に変えなければならない」と、社説は指摘した。「根本的な解決策がないままでは、私たちの災害は繰り返し発生し、損失が続くばかりだ」

クリーンエネルギーへの投資を訴えるネパール

 ネパールの英字紙カトマンドゥポストは、4月22日の「アースデー」に寄せて、前日の4月21日に「グリーンエネルギーへの適切な投資が必要だ」とする社説を掲げた。
 「今こそ、化石燃料への依存から脱し、環境保全に寄与するグリーンエネルギーへの転換を進める時である。アースデーとは、地球が、私たちが生存できる唯一の惑星であることを今一度思い起こす日だ。私たちの目前で広がる危機的状況をより良い明日へと転換できるかどうかは、私たち自身にかかっている」
 新興国の社説で環境問題が採り上げられる場合、「環境破壊の主な原因を作ったのは先進工業国だ」という認識が潜んでいることが多い。しかし、カトマンドゥポスト紙のこの社説には、「自分たちが変わらなくてはならない」という強い危機感がにじむ。「先進国であれ、開発途上国であれ、自分たちは環境保全の責任を担うべき当事者だ」という認識が、徐々に世界中に浸透しつつあるように思われる。

 

(原文)
パキスタン:https://www.dawn.com/news/1687523/killer-heatwave
ネパール:https://kathmandupost.com/editorial/2022/04/21/go-green-sooner
バングラデシュ:https://www.thedailystar.net/views/editorial/news/enact-nrcc-law-empower-river-commission-3009451

 

 

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