スリランカ大統領選におけるメディアの役割
自由で公平な選挙報道とは
- 2019/10/30
スリランカでは11月16日に、5年に一度の大統領選挙を迎える。現職のシリセーナ大統領の任期満了に伴うもので、ウィクラマシンハ首相率いる与党第一党の統一国民党からプレマダーサ氏、スリランカ人民党からラジャパンクサ氏など、35人もの候補者が出馬する見込みだ。10月14日付のスリランカの英字紙デイリー・ニューズは、大統領選を迎えるにあたり、メディアの役割について論じている。
選挙で「熱狂」するメディア
選挙運動、選挙報道は、その国によってルールや方法が違う。社説によれば、スリランカでは、「一般的に選挙は社会的に注目度が高いため、活字メディアか電子メディアかを問わず、報道に熱が入る。さらに、メディアが選挙に<熱狂>するもう一つの理由としては、候補者たちが先を争うように広告を出すため、結果として儲かるためだ」と、指摘する。
そのような選挙報道について、デイリー・ニューズの社説は、「どんなメディアであろうとも、特定の候補者のプロパガンダ装置にならないようにしなくてはならない」と、警告する。社説は、スリランカの選挙管理委員会が公表している選挙報道に関する「ガイドライン」の34項目目に触れ、「すべてのメディア関係者がこのガイドラインを読み込まなければならない。候補者自身と候補者のメディアチームについても、同様だ」と、述べる。
(https://elections.gov.lk/web/wp-content/uploads/publication/ext-gz/Media_Giudeline_E.pdf)
なかでも、「力のある政党が、紙面やテレビなどにより多く露出しやすい可能性がある。選挙に直接的には関係のない行事、たとえば、イベントの開会式や事業のオープニングセレモニーなどに候補者が登場することがあるからだ」と、指摘した上で、「メディアはこの点にも最新の注意を払い、他の候補者や政党も等しく報道するよう心掛けねばならない」と、注意を促す。
多様な「報道」手段
選挙報道には、日常のニュース以外にもさまざまな手段がある。社説が挙げるのは、例えば世論調査だ。特定の候補者に肩入れしたメディアは、「どのような方法で調査をしたのかを明らかにしなかったり、疑わしい調査を報道したりすることがある」と、社説は指摘する。
中央選管による報道のガイドラインは、この点についても、「調査を実施した団体名、調査費用の負担者、調査対象者数、採用の方法、統計上の誤算の範囲などを同時に報じなくてはならない。また、調査時点での見解であることも明示しなくてはならない」と、細かく規定している。社説は、これらについて「すべてがもっともで有効な指摘だ」と、評価する。
また、社説は、フェイスブックやツイッターなどのソーシャルネットワークサービス(SNS)が有権者に与える影響についても取り上げ、「こうしたメディアは、コントロールすることが非常に難しい。SNSがいかに選挙に<ネガティブに>影響しているかという研究も多い」と、論じている。この社説がSNS上の情報をネガティブにとらえすぎているという傾向はあるものの、SNSの影響力は確かに大きく、有権者自身の思考力や判断力を低下させているという側面は否めないだろう。
選挙報道は、「媒体」としての質を大きく問われる機会である。それは、どこの国でも変わらない。自由で公平な選挙報道とは何なのか。社説には詳しく論じられていなかったが、情報を発信する側の高い報道倫理と同時に、その情報を見極める力、受け取る側のメディアリテラシーの啓発も必要ではないかと思われる。
(原文:http://www.dailynews.lk/2019/10/14/editorial/199711/elections-role-media/)