ローマ教皇が同性愛者の法的保護の支持を表明
「シビルユニオン法制定に向けた強いシグナル」と伝えるフィリピンの社説

  • 2020/11/15

10月21日、ローマ教皇フランシスコが「同性愛者は神の子であり、家族を持つ権利がある」と発言していたことが明らかになった。歴代のローマ教皇の中で初めて、同性カップルの法的権利を保証することを支持したものである。10月31日付のフィリピンの英字紙インクワイアラーは社説でこの話題を採り上げた。

ローマ教皇が「同性愛者は神の子」だと発言し、注目を集めている (c) Ashwin Vaswani / Unsplash

「同性愛者は神の子」

 この発言は、ローマ国際映画祭で上映されたドキュメンタリー映画「Francesco」の中で明らかになった。社説によると、ローマ教皇は映画の中で、「同性愛者は神の子であり、家族を持つ権利を有する。誰一人として、同性愛者であるがゆえにみじめな状態に陥ってはならない。彼らの権利を法的に守るために、シビルユニオン法を制定しなければならない」と、発言している。

 シビルユニオンとは、同性のパートナーシップを法的に承認する取り決めを指し、結婚とは区別されるものの、法的には男女の夫婦とほぼ同じ権利が付与される。世界で初めてシビルユニオンが制定されたのは1989年、デンマークで、その後、多くの国で制定されるようになった。カトリックの国々であっても、ベルギー、スペイン、フランスなどでは同性婚が、また、イタリア、チェコ、ハンガリーなどではシビルユニオンが認められているが、フィリピンではまだどちらも認められていない。

 この日、社説はまず、ある同性カップルの物語を取り上げた。米国に住む男性同士のカップルのうち、一人がAIDSによってひん死の状態になったが、家族は2人の関係を認めていなかったため、彼のパートナーは彼の治療に口を出すことも、病床を見舞い、慰めたり励ましたりすることもできなかった。臨終にも立ち合うことは許されず、通夜にも、葬儀にも、そして埋葬にも加わることができなかったという。

 社説はこう問いかける。「同性愛のカップルたちが、生きるにしろ、死ぬにしろ、どれほど強い嫌悪感や批判、そして悪意に接しなければならないのかを思い知らされる話だ。遺された男性の喪失感や悲しみの深さは、私たちにも想像がつく。しかし、亡くなった男性の気持ちはどうか? 私たちは、自分が人生の最期を迎える時、最も大切な人のそばにいることが許されないことの孤独感や絶望を共有することができるだろうか」

重要な一歩に

 「このカップルが残酷に引き裂かれたのは、彼らがたった一つのものを持っていなかったためだった。それは、彼らが単なる友達やパートナーではなく、家族であり、お互いの人生のパートナーであることを証明する書類だった」

 その上で社説は、「こうした権利を、配偶者や家族は当たり前のように手にすることができる。しかし、LGBTQのカップルやその家族は、それを入手するために大変な苦労を強いられるのだ」と、指摘する。

 ローマ教皇の発言を受け、フィリピン・カトリック司教協議会(CBCP)は「(教皇は)我々のモラルや正統な信仰心を破壊しようとしているのではない。教皇は、正しくあることよりも、思いやりと哀れみを持つことを重視したのだ」と指摘した上で、CBCPの暫定代表であるパブロ・バージリオ・デービッド司教が「教皇は、同性愛者たちがどれほど多くの差別を受け、拒絶的な反応を経験してきたか認識している」と語ったことを紹介し、教皇の発言を支持したという。

 これに対し、「非常に衝撃的な声明だ」「同性愛者を擁護する教皇の発言によって反道徳的な行動が誘発されることを危惧する」という意見も上がっているという。もっとも、社説も指摘するように、教皇の発言はまだ同性婚まで容認したものではなく、結婚は男性と女性によってなされるものだという考えは維持しているという。

 社説は、バチカン市国で取材した経験のある大学教授の意見を引用し、「教皇の発言は、正式な教義にはならないものの、カトリック教会が同性愛をオープンに議論するための道筋を開いた」との見方を示した。また、米国イエズス会のジェームズ・マーティン牧師のツイッターを引用し、「教皇の発言は、カトリック教会がLGBTQの人々を支持する上で重要な一歩となると同時に、シビルユニオン法の制定に反対する教会に対して強いシグナルを発するものだ」とも指摘している。

 カトリックの世界では「歴史的」とも言われる教皇の今回の発言によって、今後、どのような動きが生まれるのか、注視したい。

 

(原文: https://opinion.inquirer.net/134897/the-popes-strong-signal)

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