新型コロナ再拡大のタイで再び都市封鎖か
隣国ミャンマーから持ち込まれたウイルスで相次ぐクラスター

  • 2021/1/15

 新型コロナの感染拡大が収束しつつあったタイで、陽性者が急増している。北部のタイ・ミャンマー国境や、東部のサムットサコーンやラヨーンで感染が相次いでいるのだ。2020年12月30日付のタイの英字紙バンコク・ポストでは社説でこの問題を採り上げた。

タイではミャンマーからの帰国者によって持ち込まれたウイルスによるクラスタ―が相次いで発生している (c) Robert Norton / Unsplash

終息から再拡大へ

 タイにおける2020年12月30日までの新型コロナ感染者は6690人、死者は61人。厳しい行動規制や感染ルートの追跡が奏功し、世界の他の国々と比べても感染は抑制されていた。しかし、11月末になって事態が変わり始めた。

 11月27日、ミャンマーのタチレクから国境を接するタイのチェンライに戻ったタイ人女性が、新型コロナに感染していることが確認された。これをきっかけに、ミャンマーで働いていたタイ人に相次いで感染が確認された。ミャンマーでは、新型コロナの感染が急速に拡大している。そして12月半ばになって、バンコク近郊のサムットサコーン県の水産市場で500人以上のクラスター感染が確認された。さらに、12月下旬にはラヨーン県の違法ギャンブルでの感染拡大が発覚した。

 こうした状況について、社説は次のように述べ、高まる危機感と国民が抱く懸念を代弁する。

 「タイ政府の新型コロナ対策問題解決センター(CCSA)は新たな決断を迫られている。新たな感染拡大は収まる様子を見せていない。12月15日から30日までの間、国内での新規感染者は43県にわたり、1日100人以上のペースで確認されている。首都バンコクでも、12月28日には90人を超える新規感染者が確認された。バンコクの感染症対策委員会は、競馬場、闘鶏場、闘牛場、闘魚場といった娯楽施設の一時的な閉鎖を指示した。非常に心配な状況だ。ラヨーン県の違法カジノのように、把握されていない感染源があるのではないか、という懸念もある。プラユット首相は、関係当局に国内の違法入国者を取り締まるよう指示した模様だ。しかし、ひそかに国境を越えてくる人たちを止めることが可能なのだろうか」

きめ細かな対策を

 この時期はさらなる不安要素も加わる。

 「新年の休日シーズンは、人々の移動やパーティーといった懸念をもたらす。どちらの行動も、友人同士や家族の間で、適切な距離をとるならば許されているが、もちろん危険性もある」

 社説によれば、同国では「これ以上の感染者急増を食い止めるために都市封鎖しかない」という意見が出ているという。社説は、「著名人を含む人々の中には、全国的な都市封鎖が必要だという人もいる。人々の厳しい行動制限は経済的な打撃をもたらすが、それで感染拡大が防げるのであれば、検討の余地はあるかもしれない」としながらも、「都市封鎖が有効な手段であることを証明できるのは誰だろう」と、疑問を呈する。

 「都市封鎖の負の衝撃はだれの目にも明らかであり、前回の打撃は今なお尾を引いている。マクロ経済レベルでの成長率の下落だけでなく、私たちの日常でも生活が苦しくなった人々がたくさんいる」

 その上で社説は、よりきめ細かい対策を取ることで感染発生地域を限定することが重要だ、と指摘する。

 「政府とCCSAは、前回の体験から教訓を学び、都市封鎖の影響が人々の生活にどれだけ大きいかをしっかりと認識すべきだ。全国どこでも一律の対策を取るのではなく、感染拡大の状況をより綿密に調べ、感染している場所とそうではない場所をきちんと区分けし、各県知事がそれぞれの地域にあった対策をとれるようにすべきなのだ」

 それに加えて社説は、国民一人ひとりの努力を呼び掛けた。

 「多くの国民は新型コロナについての知識をすでに持っており、自分自身できちんと予防策をとれる状態になっている。自分で自分を守ることは難しいことではない。石鹸で手を洗い、アルコール消毒し、安全な距離を保ち、公衆の場ではマスクをつけ、目や鼻や口を触らないようにするということだ。それは、今なお有効な手段である。政府やCCSAがこれ以上の感染拡大を防ぐための決断をしなくてはならないことは確かだ。しかし、すぐに年末年始の休日シーズンが始まる。自分自身と愛する人たちを守れるかどうかは私たち一人ひとりの行動にかかっている。その行動により、都市封鎖が再び実施されるかどうかも決まってくるのだ」

 感染を抑え込んでいたタイに新型コロナが再びもたらされた要因のひとつは、隣国ミャンマーの感染拡大だ。新型コロナが一国の対策だけでは終息しないことを改めて確認されられる。

 

(原文: https://www.bangkokpost.com/opinion/opinion/2043239/lockdown-or-not-)

関連記事

ランキング

  1.  ミャンマーでクーデターが発生して10月1日で8カ月。現地では、抗議する市民への厳しい弾圧が今なお続…
  2.  8月15日のカブール陥落以来、混乱の続くアフガニスタン。アフガニスタンに派兵していた国々を中心に、…
  3.  タリバンによるカブール陥落のニュースは、世界を震撼させた。国外脱出を求めて空港に押し寄せたアフガニ…

ピックアップ記事

  1.  ミャンマーでクーデターが発生して10月1日で8カ月。現地では、抗議する市民への厳しい弾圧が今なお続…
  2.  8月15日のカブール陥落以来、混乱の続くアフガニスタン。アフガニスタンに派兵していた国々を中心に、…
  3.  タリバンによるカブール陥落のニュースは、世界を震撼させた。国外脱出を求めて空港に押し寄せたアフガニ…
ページ上部へ戻る