シンガポールで20年ぶりに新首相が誕生
地元英字紙は次世代のリーダーの課題と期待をどう報じたか
- 2024/6/27
シンガポールで5月15日、約20年ぶりに首相が交代した。リー・シェンロン氏が退任し、後任に副首相だったローレンス・ウォン氏が就任した。官僚出身、51歳と若い次世代のリーダーと呼ばれるウォン氏のかじ取りが注目される。
歴代首相の遺産を受け継ぎ政労使連合の強化を
シンガポールの英字紙ストレーツタイムズは、5月7日付の社説でウォン氏が取り組むべき課題のうち、主に労使関係について論じた。
社説はまず、リー・シェンロン氏にとって首相として最後の演説となったメーデー集会を採り上げた。社説は、「リー・シェロン首相はシンガポールの労働運動の物語を独立以来の国家進歩をより広げるために、政府、労組、経営者による政労使連合という形で構築した」と評価。そのうえで、「シンガポールの最初の3人の首相であるリー・クアンユー氏、ゴー・チョク・トン氏、リー・シェンロン氏は、強固な国家基盤を築き、それを遺産として次の世代に残した」と述べ、次の首相であるウォン氏もこの遺産を引き継ぐことを明言した。
一方で社説は、「シンガポールの経済発展を築いた礎となった政労使連合が近年、新たな変化に直面している」とも指摘する。例えば、柔軟な勤務形態や、ワークライフバランスの重視などだ。また、高齢労働者の雇用も新たな課題となっている。社説はこれらの課題に対して、政府、労組、経営者が対立するのではなく、「競争経済で勝ち抜かなければならないことが前提だ」として、相互に協力していくことを強く求めている。
地殻変動の時代に求められる団結と安定の政権運営
さらに同紙は、首相の交代を受け、5月16日付で「移行期の安定したステアリング」と題した社説を掲載した。
社説によると、ウォン新首相は「継続性と安定性が重要事項である」と強調した。他方、その力量について、社説は「世界と国内で起こっている地殻変動によって試されるだろう」との見方を示し、特に対外政策について「歴代の三首相とはまた違った状況に直面している」と指摘した。その例として社説は、米中対立下でシンガポールがどう振舞うのかが問われていることや、欧州と中東で相次いで発生した紛争が激化するタイミングで首相に就任したことを挙げ、「シンガポールの原則的な立場を堅持することが必要」だと主張する。
また社説は、「デジタル経済と人工知能は今後、人間の仕事に置き換わっていくと同時に、新たな機会も生み出すだろう」と述べたうえで、テクノロジー革命によって世界経済が再構築されていると指摘。そのうえで社説は、「歴史を振り返って見ると、シンガポールの奇跡は技術革新によってもたらされた」「変化に適応する人々の機敏性により生み出された」と述べ、シンガポールは新たな変化に対しても十分に適応力があると述べた。
最後に社説は、ウォン新首相に対し「さまざまな世代の関心や願望を理解し、多くの国民を巻き込みながら政権運営をしていくことが重要だ」と述べ、「世界的な不確実性に直面し、国を団結させることに焦点を当てる必要がある」と訴えかけている。
(原文)
シンガポール:
https://www.straitstimes.com/opinion/st-editorial/building-on-its-success-singapore-must-labour-on
https://www.straitstimes.com/opinion/st-editorial/steering-with-stability-in-transition-times