超高齢社会に突入するシンガポールで経済安定化のカギを握るのは
定年と再雇用年齢の引き上げ策で人口構成の変化をカバー

  • 2024/4/28

 シンガポールでは、2026年7月1日以降、定年が現在の63歳から64歳に引き上げられることに伴い、再雇用の上限年齢も68歳から69歳へと引き上げられる。シンガポールは2030年までに国民の4人に1人が65歳以上となる「超高齢社会」へと突入することが予測されており、高齢者が経済を支える柱となりそうだ。

(c) Ravi Patel / Unsplash

65歳から69歳までの半数が現役労働者に

 シンガポールの英字紙ストレーツタイムズは、3月7日の社説でこの話題をとりあげた。

 社説によると、定年と再雇用の年齢は、2030年までにはさらに引き上げられる予定で、定年は65歳、再雇用は70歳までにすることで労使と政府が合意している。今回の引き上げは、その一環だ。

 社説は、「高齢者を雇用することで、高齢化社会の経済の安定化につながる」と断言する。さらに、2023年には就労継続を希望する高齢労働者の10人に9人以上が再雇用された、というデータを紹介している。つまり、高齢化により労働力不足に陥った社会のニーズと、高齢者自身の「働きたい」という姿勢がマッチングしている、ということだ。実際、シンガポールは、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で、65歳から69歳の労働者の雇用率が3番目に高く、2023年には48.3%に上ったと見られている。これは、この年齢層の2人に1人が働き続けている、ということを意味する。

 とはいえ、これまでのように、労働人口の増加によって高い経済成長率を維持することは、今後、難しくなる。社説は、「シンガポールの労働者がバリューチェーンに進出できるようにする一方で、彼らの仕事を補完できる外国人労働者を受け入れることで生産性の高さを追求しなくてはならない」と、今後の課題について指摘している。

少子化は「個人の選択の自由」の代償

 一方、高齢化とは表裏の関係にある出生率についても、シンガポールは岐路に立っている。3月5日付の同紙の社説は「合計特殊出生率の驚くべき低下」について論じている。

 社説によると、シンガポール政府は2月28日、2023年の合計特殊出生率が0.97になることを発表した。人口を維持するためには2.1の出生率が必要だが、シンガポールの数値はそれを大きく下回る。つまり、人口は減少していくということだ。

 社説は、シンガポールは結婚と子育てを支援するために、さまざまな政策を打ち出しているが、どれも奏功しておらず、「他国と同じ傾向に陥っている」という。社説が例に挙げたアメリカでは、女性一人あたりの出産数が1950年の平均3人から1.6人に減少。「東アジアの多くの国々も人口減少の一途をたどっている」と指摘する。

 「シンガポール人は、結婚や子育てを個人の選択の自由だと考えている。しかし、出生率の低下や成長の鈍化、高齢化、という悪い組み合わせに政府が歯止めをかけられない場合、我々は熟慮する必要がある」と、社説は述べる。確かに、子育てや結婚は個人の選択だが、自由な選択が積み重なった結果、社会の形は徐々に変わり、個人のライフスタイルも変化を余儀なくされる。先の記事で論じられた高齢者の労働も、その一環だと言えるだろう。

 「この先も間違いなくシンガポールは存続する。だが、未来のシンガポールは今とはまったく違った国になる可能性もある。今の選択が未来を決めるのだ」

 

(原文)

シンガポール:

https://www.straitstimes.com/opinion/st-editorial/enabling-workers-to-retire-later

https://www.straitstimes.com/opinion/st-editorial/alarming-fall-in-total-fertility-rate

 

 

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