パキスタンのカラチでビルが再度倒壊
求められる監督省庁の適切な管理

  • 2020/3/9

 パキスタン南部の都市カラチで3月5日、5階建ての建物が倒壊した。

 子どもを含む17人が死亡したこの事故について、パキスタンの英字紙ドーンは3月7日付の社説で採り上げた。

パキスタンの最大都市カラチの街並み (c) usama tayyab / Unsplash

追加建築が原因

 社説によると、倒壊の原因は、5階建ての建物の上に「6階」部分を違法に追加建築したことだ、という。「17人の犠牲者への責任は、違法建築を施工した人たちと、この状況の見て見ぬふりした行政当局にある」。さらに社説は、「パキスタン国内の主に都市部では同様の事故がしばしば起きており、昨年12月にも同じカラチで、6階建ての住居建築物が倒壊した」と、続ける。ただ、この時は、奇跡的に犠牲者は出ていない。

 社説は、この倒壊事故の問題点を次のように指摘する。「このように頻繁に起きる倒壊事故の教訓は、(カラチのある)シンド州建築当局に生かされていないし、2,000万人近い人口を抱える都市の住宅問題にも生かされていない。この建物は築3年で、老朽化していたわけでも、違法な場所に建てられていたわけでもない。ただ、許可を受けていなかった6階部分を違法に建築したことが、全体の構造を弱めてしまったのだ。もし、行政当局がこの違法建築を止めさせていれば、犠牲者は出なかったであろう」

 さらに社説は、こうした追加建築の事例がほかでも見過ごされ、常態化していた、とも指摘する。この問題は最高裁でも採り上げられており、シンド州建築局が狭い土地に高い建物の建設を許可していることが非難された。最高裁は、シンド州の責任者に改善を求め、建設局幹部の更迭を命じているという。

人災を防げ

 カラチは、パキスタンの中でも最大級の都市だ。社説は、この都市の包括的な開発計画についても見直す必要がある、としている。

 振り返れば、バングラデシュの首都ダッカ近郊で2013年4月、縫製工場などが入った8階建ての商業ビル「ラナ・プラザ」が倒壊した。死者1,127人、負傷者2,500人以上で、近年では最悪の倒壊事故となった。当時、建物にはすでに柱や壁にひびが入っていたところに停電が発生して、発電機が作動したため、その振動でビルが崩壊したといわれる。

 さらに、カンボジアでも、2019年6月、20年1月と、建築中のビルの倒壊が相次ぎ、合計で50人以上が犠牲になっている。

 こうした建築物の倒壊は、建物が当初の目的とは違う使用方法をされていたり、そもそも違法の建築だったり、劣悪な建材や設計が原因であったりすることが多い。そのほとんどは、技術や法律の順守、監督省庁の適切な管理で防ぐことができたはずの「人災」である。こうした悲劇を、一つでも減らしてほしい。

 (原文:https://www.dawn.com/news/1538980)

 

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