新型コロナのワクチン製造、今こそ国際協調を
スリランカの社説が先進国に分配格差の是正と知財の放棄を訴え

  • 2021/5/13

 多くの途上国では、ワクチン接種こそ感染の拡大を抑制するカギを握っていると考えられているにも関わらず、思うように調達できないという問題に直面している。4月27日付のスリランカの英字紙デイリーニューズは、社説でこの問題を採り上げた。

「感染拡大の防止に向けて世界が一丸となって取り組むために先進国が取り組むべきことがある」とスリランカの社説が訴えている (c) Nataliya Vaitkevich / Pexels

インドの感染拡大による影響

 社説によれば、スリランカのラジャパクサ大統領は4月25日に特別声明を発表し、「国民の多くがワクチンを接種すれば、新型コロナの感染拡大を抑制できる」と述べた。同時に大統領は、ワクチンを入手するための政府の計画も明らかにした。スリランカは、ファイザー、アストラゼネカ、ロシアのスプートニクVワクチンの購入を進めているという。
 現在、スリランカでは、ワクチンの在庫が底をつき、接種が中断しているという。その背景には、インドで国内の感染者が急増し、アストラゼネカ(インドのライセンス名・コビシールド)のワクチン輸出を禁止していることが挙げられる。さらに社説は、世界最大のコビシールドの製造会社であるインドのセラム・インスティチュート・オブ・インディア(SII)が原材料の不足に直面しているとも指摘する。通常はこれらの原材料を米国など先進国から輸入しているのだが、これらの国でも不足を恐れて輸出が禁止されているというのだ。
 こうした状況を受け、社説は「新型コロナの感染拡大を抑制するために、今こそ国際協力の精神が必要だ」と訴える。
 「新型コロナウイルスの影響は地球全体におよぶ。事実、これまでに1億5000万人近くが感染し、310万人が死亡した。<すべての人が安全でない限り、誰も安全ではない>ということにほかならない。対策が遅れれば遅れるほど、より感染力が強くて重症化しやすい変異株が増えるだろう」

ワクチンの自国製造に向けて

 世界保健機関(WHO)によると、新型コロナウイルスのパンデミックを2024年までに抑制するためには、ワクチンの公平な配布が不可欠だという。しかし社説は、「公平なワクチン分配への動きは、現状では見られない」と、指摘する。
 「これまで世界中で8億9000万回分のワクチン接種が行われたが、うち81%は高所得あるいは高中所得国の人々への接種であり、低所得国の人々は0.3%にとどまっている。残念ながら、この状況は予測されていた。1980年代にHIV/AIDSが流行した際には抗レトロウイルス薬がすぐに開発されたが、サハラ以南のアフリカ諸国の人々に行き渡るまでに10年以上の年月を要した」
 さらに社説は、国連とWHOが公平なワクチン分配をするために立ち上げたCOVAXと呼ばれるメカニズムについても、「COVAXは4月22日までに119カ国に対して4300万回分のワクチンを配布したが、世界人口40億人の0.5%に過ぎず、ワクチンを渇望している途上国にとっては大海の一滴に等しい」と指摘し、十分に機能を発揮していないとの見方を示す。
 「事実、ワクチンナショナリズムとでもいうべき動きが新型コロナの制圧を妨げている。裕福な国は十分な量のワクチンを注文し、自国民の分を確保して接種したうえで、ようやく他国に分け与えることを約束する。つまり、それらの国々の若者は、途上国の高齢者より先にワクチンを接種できるのだ」
 ワクチン分配の不公平性について、社説は「先進国が取り組まなければならないことがある」と指摘し、次のように訴える。
 「経済的に見ても、もし先進国だけが感染拡大の抑制に成功し、途上国に感染が広がり続ければ、経済損失は数年間で5兆ドルに上るだろう。先進国は、COVAXにさらに190億ドルを拠出し、分配の格差を埋めるべきだ。さらに、インドや南アフリカが主張しているようにワクチンを製造する際の知的所有権を放棄するとともに、コスタリカが提案しているように新型コロナ・テクノロジー・アクセス・ツールを通じてライセンスを共有すべきだ。そうすれば、途上国でも自分たちでワクチンを製造することが可能になる」
 ワクチンの製造や分配のプロセスについて、途上国からの視点や意見は重要だ。彼らが指摘する通り、全体が安全でなければ誰も安全とは言えない。多くの先進国にこの声が届くことを願いたい。

 

(原文:http://www.dailynews.lk/2021/04/27/editorial/247554/vaccines-key)

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