スマトラ島沖地震から19年「永遠の警戒が唯一の答え」
被災の記憶は薄れても引き継がれた教訓
- 2024/1/31
2004年12月26日、インドネシア西部のスマトラ島北西沖のインド洋で、マグニチュード9.1とされる地震が起きた。地震によって発生した大津波は、インド洋に面した各国の沿岸部に、甚大な被害をもたらした。
19年目にあたる2023年12月26日、被災した国々の中には、いくつかの紙面に記事を掲載した国もあったが、社説としてとりあげた新聞は少なかった。22万人以上が亡くなった大災害への記憶も、時とともに薄れてしまう。私たちは戦争やテロ、新型コロナのパンデミックなど、新しい脅威に毎年、直面し続けているからだ。

2004年、スマトラ島沖地震の津波。被災した人々が、流されるトラックに必死でつかまろうとしている (c) Khao Lak Ausflüge / Wikimedia Commons
津波警戒システムの充実で命を守る
この大災害について社説で取り上げたのは、スリランカの英字紙デイリーニューズだ。2023年12月26日付で、「ボクシングデー 津波から19年」と題した記事を掲載した。
社説は「2004年まで『津波』という言葉さえ知らなかった私たちだが、今はこの巨大な波がもたらす危険性を痛いほど認識している」と述べ、甚大な被害から人類が学んだことは大きい、と振り返る。
この大津波で多くの命が失われた理由の一つは、「早期警戒システムの欠如」だった、と社説は分析し、次のように述べる。
「当時、米国の地質調査所はインド洋に面した国々に津波の発生を警告しようとしたが、さまざまな要因が重なり、メッセージが正しく届かなかったため、あのような大きな悲劇が起きてしまった。しかし現在、この警戒システムはかなり改善されている。インド洋地域には今日、『インド洋津波警戒システム』と呼ばれる、津波に関する高度な情報収集・配信ネットワークがあり、世界60カ所以上の地点にセンサーが設置されている」
その一方で、「この警戒システムが適切に機能しているかどうかは不安がある」と、社説は述べ、インドネシアで最近、これらのシステムに障害が何度も発生していると伝えている。「スリランカをはじめ、インド洋上の国々は、警報システムの修復などの集団的措置をとる必要がある」と、社説は提言する。
スリランカでは、このほかにも津波が発生すると携帯電話にメッセージを配信する機能が付けられたり、、テレビやスマートフォンを持っていない人々も津波警戒アラートを受け取れるようにすべての沿岸地域に警告サイレンを鳴らすタワーが設置されたりしているという。
進歩する津波の研究 日本の「戦略的な緑の丘」も参考に
ぞの一方で、社説は「津波のメカニズムの研究も進んでいる」とも指摘する。なかでも「津波研究で世界をリードしている」として社説が注目するのが、日本の取り組みだ。日本では、津波による被害を少しでも軽減するために、海岸線沿いに「戦略的に配置された緑の丘」、つまり防潮林が設置され、景観を守りながら海岸へのアクセスも維持している、と社説は注目する。
「スリランカでは近年、地震や津波に対する脆弱性が高まりつつあり、津波研究に積極的に取り組まなくてはならない。地震や津波は、何の前触れもなく、ある日突然、我々に襲い掛かってくるものかもしれない」と指摘したうえで、社説は「永遠の警戒が、唯一の答えだ」と言い切る。この言葉は、スリランカに限らず、そして地震や津波に限らず、すべての自然災害に共通する真実だろう。
(原文)
スリランカ:
https://www.dailynews.lk/2023/12/26/editorial/314057/boxing-day-tsunami-19-years-on/