ガザでの戦争、グローバルサウスはどう見るか
エネルギーショックへの警戒 遠くインドにもおよぶ紛争の影響
- 2023/11/28
パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスと、イスラエルとの武力衝突は激化の一途をたどり、ガザでは惨劇が続いているが、この紛争の影響は、遠く離れた国にも及んでいる。「グローバルサウス」と呼ばれる新興国、なかでも中心的な立場にあるインドは、この状況をどう見ているのだろうか。
逃げ場のないガザ市民に思いを寄せる
インドの英字メディア、タイムズオブインディア紙はこの問題をたびたび社説でとり上げ、関心と影響の大きさをうかがわせている。
10月16日付の社説では、「イスラエルがハマスの攻撃を非難し、ハマスがイスラエルの爆撃を非難する。そしてあらゆる国々が、戦略的計算に基づいてどちらかの言い分を支持する」と、各国の思惑が複雑に絡んでいることを指摘。そのうえで視線を市民に移し、「こうした対立の霧が立ち込める中、明らかなことは、ガザの人々にはまったく逃げ場がないということだ。イスラエル軍の砲撃によって近隣は瓦礫と化し、もはや家の中も安全ではない」と、犠牲者の多くが無抵抗の民間人であることに懸念を表明した。
燃料価格の高騰に募る警戒
さらに同紙は、10月19日付で「ガザ市民の犠牲が止まらなければ、中東の紛争は拡大するだろう」と題した社説を掲載した。
社説は、「ハマスによる攻撃は非良心的なものであり、イスラエルには自国を防衛し、加害者を裁く権利がある。しかし、その一方で、これまでのイスラエル軍のやり方は、ガザで多くの民間人の死傷者を伴うものであり、イスラエルへの支持は弱まりつつある」と指摘し、双方の行動がともに不適切であるとの見方を示した。
また社説は、自国を含むグローバルサウスへの影響について、「紛争の拡大によって引き起こされる燃料高騰により、再びエネルギーショックの危機に瀕している」と警鐘を鳴らす。「世界のほとんどの国々は、新型コロナの大流行による打撃からいまだ完全には回復できていない。そうした中、我々は今、既存の債務危機と、先進国で続くインフレという、2つの同時多発的な紛争の真っただ中にいる。これらに加え、新たなエネルギーショックが起きれば、経済的な影響は甚大なものとなり、さらには、社会的、政治的安定が損なわれる可能性すらある。イスラエルとハマスの戦争がもたらす連鎖的な影響を過小評価してはならない」と、危機感を隠さない。そのうえで、「どの国も当事者として紛争下にある市民を保護し、紛争による悪影響を最小限にとどめるよう尽力しなければならない」と訴えた。
和平の見込みは薄くとも、共存の道を
一方、インドの隣国、スリランカの英字紙デイリーニュースは10月19日付でこの問題を取り上げ、「紛争がどこまで激化し、どれだけの死者が出るか分からない」と事態に悲観的な見方を示し、「ハマス、イスラエルの双方とも、自身の行動の意味するところ、特に、世界全体からどう見られているのかを、よく考えるべきだ」と述べた。
社説はまず、「和平の見込みはかなり薄い」と指摘。さらに、「イスラエルとパレスチナの紛争に対する実行可能な唯一の答えは、互いに歩み寄ることだ。すべてのアラブ諸国はイスラエルの生存権を認めなければならない。イスラエルは逆に、パレスチナ国家を承認しなければならない」と続け、2つの「国家」が認め合い、共存することこそが解決策だと主張する。
最後に「近隣国との不安定な関係の中でじわじわと核武装を進めるイスラエルは、すでにロシアとウクライナの戦争によって緊張が高まっている今日の世界にとって最も不要な存在だ」と述べ、現在の国際情勢における今回の紛争の「意味」について指摘した。
(原文)
インド:
スリランカ:
https://www.dailynews.lk/2023/10/19/editorial/177508/a-two-state-solution-is-the-only-way/