車社会のハワイに鉄道が来た! 住民たちの声は
観光客に人気の「アラモアナセンター」との接続は未定
- 2023/8/1
「商業施設につなげてほしい」
イーストカポレイ駅から外に出て200m程度過ぎたところで高架は途切れている。そこからは一本道で、1.4kmほど先には「カマカナアリイ」という、2016年にオープンしたばかりのショッピングモールがある。シネコンやホテルを併設し、アメリカ本土の人気店をはじめとしてショップが充実しているとして、地元民の間で人気が高いという。「1.4kmなら徒歩20分くらいなのでカマカナアリイまで歩こうと思う」とHARTのスタッフに話したら、「歩く距離ではない。やめたほうがいい」と諭された。日本と違って日差しが強く気温が高いのが理由の一つ。また、駅とカマカナアリイの間は人通りもほとんどなく、安全面のリスクもあるという。
「なぜカマカナアリイまで線路をつなげなかったのか」。スカイラインの利用者からこんな不満を聞いた。市の言い分は、「イーストカポレイ駅から路線バスでカマカナアリイに行ける」というものだが、1.4kmくらいの距離なら鉄道でつなげてしまうほうが便利に思える。
HARTのロリ・カヒキナCEOも、「カマカナアリイの少し手前で止まっているのが良いことだとは言えない」と話す。しかし、「延伸のための財源がない」とお手上げだ。当面は、イーストカポレイから出る路線バスの乗り継ぎ利便性を高めることで対応していく方針だ。
実は、路線計画には、イーストカポレイ-アラモアナセンター間が完成した後の延伸構想が4案ある。その一つに、イーストカポレイからカマカナアリイを経由してさらに西側のカラエロア空港付近まで延伸する構想も含まれる。ただ、4案の中では、アラモアナセンターからハワイ大学マノア校まで延伸する案が最有力とされている。アラモアナセンターまでの完成時期すら未定となっている現状では、カマカナアリイ付近に鉄道が乗り入れるのはその後となり、実現は遠い先になりそうだ。
とはいえ、カマカナアリイまでつなげてほしいという利用者の不満は、見方を変えれば朗報とも言える。自動車でカマカナアリイに行くつもりなら、「つなげてほしい」とは言わないだろう。これは、乗ってみたら意外に便利だったという鉄道への期待の表われともいえる。オアフ島で本格的な旅客鉄道が運行されるのは1947年に当時の鉄道が廃止されて以来、約76年ぶり。モータリゼーションという時代の流れにあらがえず消えてしまった鉄道が、再び姿を現した。鉄道に接したことがないハワイの住民たちの意識をどう変えるか。長い目で見守りたい。