激化する中東対立に南アジアで自制を求める声が拡大
戦火が広がれば世界経済の大混乱も

  • 2024/5/14

 対立が激化するイランとイスラエル。終わりの見えない攻撃に、日々、命を奪われ続けるパレスチナの人々。中東の混乱を、南アジアの国々はどう見ているのか。インドとパキスタンの社説を紹介する。

イラン北部のカズビーンで、イスラエルへの攻撃を仕掛けたイスラム革命防衛隊(編集注:イランの軍事組織)を支持するデモに参加する女性たち。(2024年4月16日撮影)(c) Wikimedia Commons/ Tasnim News

両国の均衡が崩れぬうちに軍事の縮小を
 インドの英字メディア、タイムズオブインディアは4月20日付で、「もう十分だ:イスラエルもイランも、今すぐ手を引くべきだ」と題する社説を掲載した。
 社説はまず、イスラエル側の問題として、ネタニヤフ政権が、国内の極右から圧力をかけられて攻撃規模を拡大していることを指摘した。次に、イラン側の問題として「イラン政府はパレスチナ人を守るという任務を引き受けている。イランの多くの民兵組織は、地域により大きな混乱をもたらすだろう」と、指摘した。
 一方で、社説は、「両国の対立が急激にエスカレートする可能性は低いのではないか」との見方を示す。「これまでのところ、双方の軍事攻撃は、どちらもかなり前に公表して相手側に十分な準備時間を与えているか、規模が小さいかのどちらかだ」というのが、その理由だ。
 しかし社説は、「必ずしもこの制御が今後も続くとは限らない」と指摘し、警戒感を示す。両国間の過熱した関係を冷ますためには、「イスラエルがガザでの作戦を縮小し、イランが民兵組織を抑制すること」が必要だと主張している。

忍耐強いイランを怒らせたイスラエル
 イスラム国家であるパキスタンの英字紙ドーンは、4月20日付で「イスファハンへの攻撃」と題した社説を掲載した。
 社説は、攻撃の応酬の引き金となった4月1日のイスラエルによるダマスカスのイラン外交施設への攻撃について、「イスラエルは多数のイラン上級将軍を殺害したことで、越えてはならない一線を越えた」と、表現する。なお、社説はイランについて「戦略的な忍耐力と長期戦で知られている」と表現しており、そのイランを攻撃に踏み切らせたイスラエルの側に非がある、との見方を示す。
 そのうえで、「現状は、緊張緩和を求める声が世界で響いて」おり、事態の悪化は避けるべきだ、と社説は指摘し、次のように述べる。
 「戦火の拡大は、おそらくイスラエルの過激派を除いて、誰の利益にもならない。だが、真の緊張緩和とは、イスラエルが地域の安定やパレスチナ人の生命を脅かす、ならず者国家としてではなく、正常な国家として行動することで実現される」
 さらに社説は、「イランとの戦争は、イスラエルにとって、パレスチナでの失策から注目をそらし、イランから『中東唯一の民主主義』を守るために、イスラエルの西側の友人たちを結集させるものとして有用だ」と、その目論見を分析する。だが、イスラエルの思惑通りになれば、中東での戦争は急激に拡大し、原油価格の高騰などで世界経済は大混乱に陥る。社説は、イスラエルの「西側の友人」たちに、イスラエルの不穏な行動をけん制するように求めている。

 

(原文)
インド:
https://timesofindia.indiatimes.com/blogs/toi-editorials/thats-enough-israel-iran-should-now-stand-down/

パキスタン:
https://www.dawn.com/news/1828566/isfahan-strikes

 

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