祝福されぬアジアの女性たち 男女格差解消に向けた処方箋は
土地の所有、政治参画、賃金格差・・・女性を阻む旧弊に立ち向かう

  • 2024/5/8

先進国か新興国を問わず、またどんな産業セクターにおいても、男女の格差は依然として存在する。毎年3月8日は国際女性デーに定められているものの、現実社会は必ずしも女性を祝福してはいない。

スリランカの政治家で、世界初の女性首相となった、シリマヴォ・バンダラナイケ。(c) UPI photo / Wikimedia Commons)

世界初の女性首相を生んだスリランカでも進まない女性の政治参画

 スリランカの英字紙デイリーニューズは、3月8日付で「男女平等に向けて」と題した社説を掲載した。

 社説はまず、女性の置かれた現状について、「国連によれば、女性は世界の労働の3分の2を担っているにもかかわらず、世界の収入のわずか10%しか得ておらず、所有権を有している土地も1%に満たない。世界的に見ても、男女間の賃金格差、女性国会議員の不足は明らかだ。さらに、世界全体における女性の健康状態は男性よりも悪く、女子の教育が軽視されている途上国も多い」と指摘した。

 さらに、スリランカの状況については、「わが国は、女性の教育、妊産婦死亡率、その他多くの指標において、良い水準にある。しかし、その一方で、世界初の女性首相を輩出した国であるにもかかわらず、国会などあらゆる政治機関への女性の進出は依然として低水準で、女性閣僚は1人しかいない」と、している。

 女性の教育や健康への取り組みが進んでいるにも関わらず、スリランカで女性の政界進出が進まない理由として、社説は、選挙運動に膨大な資金と人員が必要であること、暴力や脅迫がつきものになっていること、親族の政治的コネクションのない女性の政界入りが非常に困難であること、などを挙げる。「政党は、候補者の公募・推薦プロセスを通してこのような障壁を取り除くべきだ」と主張した。

先進国シンガポールにも未だ大きな賃金格差

 東南アジアの先進国であるシンガポールでも、男女の賃金格差が社会課題となっている。英字紙ストレーツタイムズは、3月27日付の社説でこの問題を論じた。

 社説によれば、シンガポール労働省のデータでは、2023年の女性の所得中央値が男性のそれを14.3%下回っているという。2018年には16.3%下回っていたことを鑑みると、それよりは改善しているものの、「さらに格差を縮めるためには、より多くの対策が必要だ」と指摘する。また、この数値の男女差は、「男性が1日で稼ぐのと同じ金額を女性が稼ぐためには、男性より61日分余計に働かなくてはならないということだ」と、指摘する。

 そのうえで社説は、この格差を解消するためには、「給与・報酬、キャリアアップ、福利厚生」の3点において、取り組みが必要だと主張する。給与・報酬については、給与体系の開示など企業の透明性がカギになる。また、キャリアアップについては、出産や育児などで女性が休職せざるを得ない点を十分に考慮する必要がある、としている。

 また、女性のキャリア選択についても言及。特に、これまでにあまり女性が進出してこなかった科学、技術、工学、数学分野への関心が高まっていることを指摘し、「心強い」と評価した。

 「幸福は、企業が従業員を、性別ではなく、仕事の内容で評価するという企業文化によって育まれる。また若い女性たちは、徐々にではあるが、前世代が経験してきた障壁を打ち破りつつある。私たちは、この変化の勢いを持続させなければならない」

 

(原文)

スリランカ:

https://www.dailynews.lk/2024/03/08/editorial/436770/towards-gender-equality/

シンガポール:

https://www.straitstimes.com/opinion/st-editorial/reduce-gender-pay-gap-further

 

 

 

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