米国で緊急地震速報「シェイクアラート」が始動
繰り返される被災経験も進まぬ防災対策の追い風となるか

  • 2021/3/23

「地震国日本に学べ」

 こうした中、日本の震災経験とその教訓に学ぼうとする動きも生まれている。
 東日本大震災の直後に仙台を訪れたというトービン教授は、「津波の破壊力に強い衝撃を受けたが、それと同時に、建造物や橋梁の多くが強い揺れに耐え、崩壊を免れ、直接的に津波の被害を受けた地域以外は、比較的早期に生活が復旧したことに感銘を受けた」と振り返り、「これは、日本が地震国だという認識が浸透し、建築工学に耐震や免震の思想が取り入れられているためだ」と指摘。その上で「米国も見習うべきだ」として、次のように訴えている。
 「米国で過去20年間、大地震に見舞われなかったのは幸いだったが、その結果、われわれは偽りの安心を抱くようになった。しかし、米連邦緊急事態管理庁の試算によると、ワシントン州やオレゴン州内にある煉瓦や石造りの家屋や、補強工事されていない学校やアパート、倒壊しやすい工場などが、対策が講じられないまま放置されると、震災発生時の被害額は1年ごとに7億1400万ドル(約777億円)膨らんでいくという。今のうちにリソースを防災に割くことで、後に多くの命が救われ、復興予算も抑えられる」

地震が発生した際の全米の被害想定額を表した図。西海岸諸州、特にカリフォルニアで37億4000万ドルと大きくなっていることが注目される (c) ShakeAlertホームページ

 こうした問題意識から、このほど地震を早期に検知して警報を発令する緊急地震速報システム「シェイクアラート」がオレゴン州で始動した。初期微動であるP波を基に、地震の位置や規模を瞬時に推定し、続く主要動(S波)の影響を判断する。現在、センサーは西海岸全域に1000カ所設置されており、データは随時、シアトルとサンフランシスコ近郊のメンローパークやロサンゼルスなど3カ所のデータセンターに送られる。少なくとも4カ所の観測データでマグニチュード5以上の震動が予想された場合、域内にあるすべてのスマートフォンで警報音を鳴らすとともに、英語かスペイン語で「地震が来る。すぐに伏せよ。安全なものに身を隠せ。動くな」と、警告する。センサーは今後、1675カ所まで増設される予定だ。

シェイクアラートは、P波初期微動データから震源や地震の規模を推定し、その後の主要動(S波)による影響を判断する (c) ShakeAlertホームページ

 さらに、各学校の地域広報システムを作動したり、上水道の配水バルブを自動的に遮断したり、消防署のガレージの扉を自動で開けたり、走行中の汽車や列車を臨時停止させたり、病院、役所、電気、ガス事業者などにも通知したりする機能も備える。
 予算不足により導入が遅れていたが、勇気づけられるニュースだ。シェイクアラートによって多くの人命が救われ、損害が低減されることを期待したい。と同時に、防災と耐震のための投資について、人々の理解を促し、意識を高めることも必要だ。政治家の指導力が問われている。

 

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