「ウブンドゥ」の精神なきG20サミット アメリカは異例のボイコット
初のアフリカ開催も重要国の欠席により懸念される機能不全

  • 2026/1/5

 G20サミットが2025年11月22日と23日の2日間にわたって南アフリカのヨハネスブルグで開かれた。日本からは高市早苗首相が初めて出席したが、アメリカは欠席。さらにトランプ大統領がアメリカの同意なく首脳宣言を採択しないように警告するなど、会議は終始、不穏な空気の中で開かれた。

南アフリカのヨハネスブルグで開催されたG20首脳会談で演説する南アフリカ共和国のシリル・ラマポーザ大統領(中央)(2025年11月23日撮影) (c) 首相官邸/Wikimedia Commons

トランプ大統領の不在に沈黙を貫いた各国首脳

 インドの英字紙ヒンドゥーは、2025年11月25日付の社説で、アメリカのトランプ大統領がG20を欠席したことについて取り上げた。

 「ウブントゥ(アフリカの言葉で『あなたがいるから私がいる』という意味)が欠けた首脳会議」。社説は今回のG20サミットをこのように表現し、アメリカの姿勢を批判した。

 また、出席した各国首脳の態度についても、「世界的な課題においてG20 の役割を強化する必要性について熱心に語った一方、最重要人物、すなわちアメリカのドナルド・トランプ大統領がサミットを欠席したうえ、アメリカ政府もボイコットし、オブザーバーとして外交官を派遣しただけだったことについては沈黙を守った」と述べた。

 アメリカは、2026年のG20議長国を引き継ぐことになっている。にもかかわらず、今回このような態度をとったこと、さらにアメリカの欠席について参加各国が批判をしない状況に対して、社説は疑問を呈し、「G20がより民主的な世界秩序を体現するという期待に反するものだ」と主張した。

 インドが2023年にG20の議長国を務めた際には、アフリカ連合(AU)がメンバーに加わった。それを受けて初めてアフリカで開かれた今回のG20には寄せるインドの期待は、かなり大きかったと思われる。だが、残念ながら、「ウブントゥの精神が欠けたものだった」と、社説は総括した。

インドネシア大統領の欠席も忖度か

 一方、東南アジア諸国から唯一、G20に参加したインドネシアも、プラボウォ大統領は欠席し、代理としてギブラン・ラカブミン・ラカ副大統領が参加するにとどまった。インドネシアの英字紙ジャカルタポストは、2025年11月28日付の社説でプラボウォ大統領の欠席について論じた。

 社説は、プラボウォ大統領の欠席の真意は、「ギブラン副大統領の外交手腕を育成することにある」との見方を示す。「プラボウォ大統領が意図的に副大統領をこの重要な国際フォーラムに派遣し、外交的に育てようとした可能性は十分にある。そうすれば、ゆくゆく重要な国内問題が発生した際、より高レベルの任務を副大統領に委任できるようになるからだ」。

 しかし、そのうえで社説は「はたしてそれでよかったのか」と疑問を呈する。インドネシアは今、東南アジア諸国のみならず、国際社会の舞台においてインドやブラジルとならぶG20の中心国の一つになろうとしているからだ。実際、プラボウォ大統領は2024年10月に就任後、BRICSサミット、国連総会、APECサミットなど、さまざまな多国間フォーラムの場で積極的に活動してきただけに、「今回、G20に欠席したことが注目を集める結果になった」と社説は指摘する。

 さらに社説は、「プラボウォ大統領の欠席がアメリカの圧力に屈したと見られるリスクがある」とも指摘する。その背景には、トランプ大統領が今回のG20について「南アフリカのラマポーザ大統領がG20を政治的に利用している」などと批判を強めていることが挙げられる。そうしたなか、トランプ大統領と良好な関係を維持するプラボウォ大統領がG20を欠席したことで、「トランプ大統領への配慮があるのでは」との見方を招きかねないと社説は指摘する。

 これらを踏まえ、社説はブラボウォ大統領が今回のG20を欠席したことについて、「いかなる国内事情があったにせよ、失策だった」と述べ、「インドネシアのような大国の大統領は、今後、G20のような世界的に重要なサミットには必ず出席すべきだ」と、注文をつけた。

 

(原文)

インドネシア:

https://www.thejakartapost.com/opinion/2025/11/28/prabowos-g20-absence.html

インド:

https://www.thehindu.com/opinion/editorial/missing-ubuntu-on-the-g-20-leaders-summit-in-johannesburg/article70318310.ece

 

 

関連記事

 

ランキング

  1.  2021年2月のクーデターから5年あまりが経ったミャンマー。2025年末から2026年初めにか…
  2.  アメリカと中国は、2026年9月に開かれた首脳会談で、人工知能(AI)のリスク管理に向けた対話…
  3.  タリバンがアフガニスタンで再び政権を掌握してから、今年8月で丸5年。その節目に…
  4.  ネパールと中国の国境沿いで8月26日、大規模な鉄砲水と土石流が発生しました。原因の一つとして指摘さ…

ピックアップ記事

  1.  2026年8月、ネパール中部を大規模な土石流が襲いました。ヒマラヤでは気候変動に伴う氷河の融解…
  2.  2017年8月25日、ミャンマー西部ラカイン州でロヒンギャの武装勢力が国境警察施設を襲撃したことを…
  3.  ミャンマー西部ラカイン州に多く暮らす少数派イスラム教徒ロヒンギャ。長年にわたり市民権を認められ…
  4.  2016年7月1日にバングラデシュの首都ダッカで発生したホーリー・アーティザン・ベーカリー襲撃テロ…
  5.  2016年7月1日夜、バングラデシュの首都ダッカで、日本人7人を含む多くの命が奪われたホーリー…
ページ上部へ戻る