終わらないテロ、アジア各国はどう防ぐ
被害を最小限にするために、今すべきこと

  • 2023/3/7

テロの誘惑から若者を守れ!シンガポールは一致団結できるか

 シンガポールで2022年12月、「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」を支持する18歳の学生が、武力行使する計画を立てたとして、拘束された。シンガポールの英字紙ストレーツ・タイムズによると、この学生は、シンガポールなどで自爆テロによる大量殺害を企てていたという。

 これを受けてストレーツ・タイムズは2月8日、「若者をテロリストの誘惑から守る」と題した社説を掲載した。

 社説によると、シンガポールでは2015年以降、今回と同様に過激派との関係が認められたとして、国内安全法に基づき21歳以下の9人が処分を受けたという。「こうした処分の主な目的は、将来、彼らが他人に危害を与えるのを防ぐためだ。しかし同時に、彼らが自分自身を守り、人生においてその能力を発揮し、前進していけるよう、精神的に更生させる目的もある」と、社説は若者たちをテロリストの誘惑から守る必要性を強調した。

 また社説は、若者たちを守るためには共同体が一致団結することが必要だ、と主張する。

 「今回のニュースは、シンガポールの人々にとって、テロリズムに立ち向かうために心を一つにする契機となるだろう。社会はテロを防ぐために団結しなければならず、疑惑や不信によって共同体同士が分裂してはならない。そのためのカギは、どのような宗教を信じていようと、若者たちが抱いている疑問や不安について、安心して相談できる社会にすることだ。まずは身近な両親から、そして宗教指導者など隣人の年長者へと広げていくべきである」

安全で冷静なテロ報道とは?パキスタンメディアの試行錯誤

 一方、パキスタンでは2月17日、南部カラチで武装勢力が警察署を急襲し、少なくとも4人が死亡、14人が負傷した。現地からの報道によると、襲撃について反政府武装組織「パキスタン・タリバン運動(TTP)」が犯行声明を出している。

パキスタン南部のカラチにある警察本部が武装勢力による自爆攻撃を受けた直後、弾丸だらけの壁の前に立つ警察官。(撮影日:2023年2月17日撮影)(c) ロイター/アフロ

 これを受け、パキスタンの英字紙ドーンは2月22日付紙面で「テロリズムの報道」と題した社説を掲載し、テロを報じるメディアの在り方について問題提起した。

 社説は、「テロリズムの再来に直面した今、パキスタンのメディアは、暴力行為をどのように報道するか、特に人質や戦闘の状況を生中継するかどうかについて、議論をすることが重要だ」と、書き出す。

 社説によると、17日に発生したカラチの警察署襲撃では、警察が現場を包囲した様子が生中継された。こうした報道は、パキスタンでは「常態化している」という。しかし、今回の事件後、パキスタン政府は、テロ攻撃の生中継や、放送・再放送を禁止する通達を出した。社説はその通達の理由について、「こうした報道は、救助活動や戦闘に影響を及ぼす可能性がある上、メディア関係者の生命までをも危険にさらす恐れがあるためだ」と、説明している。

 社説はこの通達に肯定的で、「2009年に報道機関自身が、暴力行為や人質事件などの中継に関する行動規範を打ち出している。今こそそれを見直し、改訂する時だ」と、指摘した。

 とはいえ、単に報道を控えればいいというものではない。社説は「国民の知る権利」に触れ、人々が不安によってパニックを起こさないよう、「正確な信頼できる情報を提供することが必要だ」としている。つまり、人質や関係者の安全確保と、正確かつ冷静な情報提供のバランスをとることが必要なのだ、と社説は主張しているのだ。

 そのバランスをとるためには、政府との連携が必要だと社説は訴える。具体的には「特定のテロ対策活動について、事実をメディアに提供してくれる報道官を、政府が任命すれば実現可能である」としている。さらに「テロ行為の報道について、国家が一方的に内容を規制することはあってはならない。一方で、メディア側も責任ある行動と信頼できる報道を提供するための業務指針を、内部で議論しておく必要がある」とも訴えている。

            *

 ロシアによるウクライナ侵攻などでテロ関連の報道は減ったが、世界では今もテロリストたちがうごめいている。シンガポール紙は、社会がどのようにテロの危険を予防するかを論じ、パキスタン紙はメディアのテロ報道の在り方を論じた。切り口は違うが、どちらもテロによる被害を最小限にするためには不可欠の議論と言える。不安定な世界情勢が続く中、どの国においても継続的に取り組まねばならない課題だろう。

 

(原文)

シンガポール:https://www.straitstimes.com/opinion/st-editorial/saving-the-young-from-terror-s-lure

パキスタン:https://www.dawn.com/news/1738451/terrorism-coverage

 

関連記事

ランキング

  1. ミャンマーで国軍が与党・国民民主同盟(NLD)を率いるアウンサンスーチー氏らを拘束し、「軍が国家の全…

ピックアップ記事

  1. ミャンマーで国軍が与党・国民民主同盟(NLD)を率いるアウンサンスーチー氏らを拘束し、「軍が国家の全…
  2.  ミャンマーで2021年2月にクーデターが発生して丸3年が経過しました。今も全土で数多くの戦闘が行わ…
  3.  2024年1月13日に行われた台湾総統選では、与党民進党の頼清徳候補(現副総統)が得票率40%で当…
ページ上部へ戻る