タリバンがアフガニスタン全土を制圧
バングラデシュの英字紙が他の武装勢力の動きを警戒

  • 2021/8/26

 アフガニスタンで反政府勢力タリバンが実権を握ったことについて、バングラデシュの英字紙デイリースターは8月17日の社説で採り上げた。

(c) Sohaib Ghyasi / Unsplash

「平和的な」権力移譲

 アフガニスタンでタリバン勢力による支配が始まった。
 社説は、タリバンへの要望について次のように記す。
 「アフガニスタンでタリバンの勝利が明らかになった。あらゆる出来事がそれを示している。ガニ大統領は、これ以上の暴力を避けるために国を去った。タリバン自身は流血の事態に至ることなく政権移譲があったことを歓迎している、と表明した。われわれも平和的な政権の移譲を期待しており、アフガニスタン国民を残虐な事態から避けられるかどうかは、タリバン指導者たちにかかっている」
 首都カブールを制圧したタリバン勢力は、「人々を傷つけることはない」と言っている。しかし、その言葉がどれだけ守られるのか、事態は流動的だ。
 「彼らが言うように、復讐的な殺人があってはならない。約束は守られなければならない。タリバンは国民の安全を確保するとともに、兵士を厳しい規律のもとに制御し、国民を守らなければならない」と、社説は強く訴える。
 同時に懸念されるのは、アフガニスタン国内のタリバン以外の武装勢力だ。イスラム過激派のアルカイダをはじめ、武装勢力が国内に潜んでいると言われる。社説は、「この権力の空白に乗じて活動を活発化しようとする武力勢力の動きは抑えなくてはならない」と、指摘する。また、反タリバン武装勢力による抵抗も始まっていると伝えられている。

募る国民の不安

 その一方で、アフガニスタンから伝えられるニュースは、私たちの胸を締め付ける。何とかしてこの国から逃れようとする人々の絶望的な様子が報道され、飛んでいく飛行機にしがみついたまま亡くなるなど、この混乱の中で命を落とした人たちもいる。
 社説は、「この様子から考えられるのは、アフガニスタンの人々が、これから起きることに恐怖を感じているということ、そして、もっと多くの命が奪われるのではないか、という不安感を募らせていることだ」と、いう。そして、タリバン指導者たちは、「国民に安心を確約しなくてはならない。他の勢力と協力して、国を出たいと思う人々にはその機会を与えなければならない」と、述べる。
 米国軍はじめ、外国勢力はアフガニスタンを撤収しつつある。国際社会からは、米軍に対してアフガニスタン国内にとどまるよう求める声も上がっているが、米国がこれ以上この国に責任を持ちたくないと考えていることは明らかだ。
 「前政権は解体され、タリバンは大きな責任を負った。しかし、権力を掌握することと、長期にわたって平和を維持し、政権を維持する政治構造を作り上げることは、また別のことだ。そのためには人々の心を、つかまなくてはならない」
 社説が指摘する通り、タリバン勢力が自身の思想を押し付けるのではなく、内戦を避け、国民と世界の現状を理解した政治を実行することを祈るばかりだ。

(原文https://kathmandupost.com/editorial/2021/08/17/kabul-besieged)

関連記事

ランキング

  1. ミャンマーで国軍が与党・国民民主同盟(NLD)を率いるアウンサンスーチー氏らを拘束し、「軍が国家の全…
  2.  かつて恵比寿の東京写真美術館で、毎年開催されていた「世界報道写真展」。その2024年の受賞作品が4…
  3. ミャンマーで国軍が与党・国民民主同盟(NLD)を率いるアウンサンスーチー氏らを拘束し、「軍が国家の全…
  4. ミャンマーで国軍が与党・国民民主同盟(NLD)を率いるアウンサンスーチー氏らを拘束し、「軍が国家の全…
  5.  2023年10月にパレスチナの軍事組織ハマスがイスラエルに大規模攻撃を仕掛けて以来、イスラエル軍に…

ピックアップ記事

  1.  中国とフィリピンの対立がにわかに先鋭化し、国際社会の関心を集めている。事態は、実質的に中国の第二海…
  2.  かつて恵比寿の東京写真美術館で、毎年開催されていた「世界報道写真展」。その拠点となるオランダ・アム…
  3.  台湾の頼清徳政権が正式にスタートして一カ月あまり。非党派・非営利団体・財団法人・シンク…
ページ上部へ戻る