「人身売買の被害者救出に全力を尽くせ」
バングラデシュの社説が闇犯罪のオンライン化を懸念

  • 2021/9/13

 バングラデシュで今も横行する人身売買。バングラデシュの英字紙デイリースターは6月にその実態を報じたが、8月25日付の社説でも再びこの問題を採り上げた。

(c) RoBi RiTu / Unsplash

被害者はティックトックの利用者

 社説によると、デイリースター紙は6月3日、インドへ渡った3人の人身売買の被害者の恐ろしい経験を報じた。彼女たちは人身売買仲介者にだまされて連れていかれ、性的に搾取され、売春をさせられたという。このほど、同じような事件が再び発覚した。
 「毎年のように、数千人の女性や少女たちがバングラデシュからインドなどへと人身売買されていく。デイリースター紙が8月24日付で再び報じたように、彼女たちは人身売買の国際的な闇組織によってインドに連れていかれ、売春させられた。国際的な闇組織のうち数人は逮捕されたが、未成年を含むメンバーはいまだインドにおり、逮捕されていない」
 同紙の報道によれば、今回の事件の被害者は少なくとも10人。ほとんどの女性・少女たちが、モバイル端末向けショートビデオプラットフォーム「ティックトック」の利用者だったという。このうち未成年者を含む6人はいまだ保護されておらず、インドのどこかにいるとみられる。社説によれば、バングラデシュ警察はインドを訪れ救出する意向だという。
 この事件について、インド警察はこれまでに人身売買組織の12人を逮捕しており、そのうち11人はバングラデシュ人だという。一方、バングラデシュでは20人が逮捕された。警察によれば、組織はティックトックを使っている少女たちをターゲットにし、ショッピングモールや美容院などで「割の良い仕事がある」と言って、仕事をあっせんするふりをして誘い出したという。

発覚もソーシャルメディア

 社説によれば、事件は22歳の女性が拷問され、性的暴行を加えられている様子を撮ったビデオがソーシャルメディアで出回ったことで発覚した。
 「この動画が出回るまで、インド、バングラデシュの警察は人身売買組織をただ傍観していた、ということが露呈した。しかし、事件がきっかけとなり、バングラデシュ警察は人身売買のネットワークについて重要な情報をつかむことができた。次は、誰が彼女たちの国境越えに手を貸し、(身を隠すために)別の名前を与えたのか捜査しなければならない」
 社説は、次のように指摘する。
 「われわれは、行方不明の犠牲者たちを探しだすために、警察の捜査を心から支持する。そして、インド警察当局に期待し、信頼し、捜査に全面協力をしたい。越境する闇組織を摘発するためには、警察や行政も国境を越えて協力しなければならない」
 オンラインで見知らぬ同士が簡単に連絡を取り合うことができるソーシャルメディア。その普及が、人身売買組織にも利用される事態を招いてしまった。事件の発端も、そして発覚も、ソーシャルメディアだったこと、現代的だ。ソーシャルネットワークが、古い犯罪に新しい形を生み出してしまったと言えるのかもしれない。

 

(原文https://www.thedailystar.net/views/editorial/news/take-all-steps-rescue-trafficked-victims-2159916)

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