タイの民主化要求デモ、対立の長期化を覚悟
問題の本質をストレートに報道する地元紙の社説を読む

  • 2020/11/4

タイで学生たちを中心に続く民主化要求デモは、今のところ重大な衝突や流血事件にはなっていない。しかし参加者たちが求める内容はこれまでタブー視されていた「王室改革」にまで及び、タイ社会の根深い課題が浮き彫りになっている。10月29日付のタイの英字紙バンコクポストは、この問題を社説で採り上げた。

タイの英字紙は、今回の対立がプラユット首相自身が2014年に起こしたクーデターから始まったと指摘している (c) Geoff Greenwood / Unsplash

民主的な解決に期待感も

 タイの民主派によるデモは、プラユット政権の退陣、憲法改正、王室改革などを要求し、10月半ばから連日行われた。10月15日にはバンコクに非常事態宣言が出され、5人以上の集会が禁止された。それでもデモ集会は続き、参加者の逮捕やデモ隊への放水などで一時は緊迫した状況になった。非常事態宣言は10月22日に解除されたが、問題は解決しておらず、火種は残ったままだ。

 国会では、民主派の要求を協議すべく上下院合同議会が特別開催された。社説は、「10月28日に閉幕した特別合同議会は、政治的なデッドロックについて、国会における民主的な解決策を期待させるものだった」と伝えている。

 この議会において、プラユット首相は、民主派の要求事項の一つである憲法改正に前向きな姿勢を示した。社説によれば、下院のチュアン・リークパイ議長のもとに和解委員会を設立するという連立与党の民主党からの提案にも、野党であるタイ貢献党が前向きな反応を見せたという。

 社説は、「2日間の合同議会を通じてプラユット首相は憲法改正に取り組む姿勢を明らかにし、国民投票を実施する用意があることも示した。事態の解決にはさらに必要なことも多く、民主派が要求しているプラユット政権の退陣についても特別上下院合同議会では協議されなかったものの、緊張は一定程度、緩和された」と、評価する。

長く続くたたかいに

 プラユット首相は、憲法改正以外の民主派の要求については頑な姿勢を崩していない。社説によれば、首相は「国家の危機であり、辞任はしない。辞任すれば法的にも問題が起きるだろう」と発言しているという。また、王室改革については「タイ国民の多くが望んでいない」という。

 さらに、「プラユット首相や側近たちは、確かに若干、姿勢を軟化させたかもしれない」とした上で、彼らがいまだに「反政府デモには外国勢力の後ろ盾があり、黒幕が裏で糸を引いている」といった挑発的な言葉を使うことに懸念を示す。こうした物言いによって、せっかく緩和した緊張関係がふたたび緊迫することにもなりかねない。

 さらに社説は、プラユット首相自身が2014年に起こしたクーデターから今回の対立が始まったことを認識していないことを嘆く。

 「あのクーデターによって、タイでは権威主義的な政権の支配が始まり、民主化を求める若い世代の声が高まった。もし政権がこの事実を認識していれば、根本的な解決に取り組むことができたはずだ」

 最後に社説は、タイの「これから」について厳しい言葉で記している。

 「トンネルの先に光が見えるとしても、対立はまだ続く。反君主政治、反独裁政治の運動は、それを覚悟しているようにみえる」。

 今回の民主化要求の本質をここまでストレートに記載するということ。そして、それを許容する、あるいは、求める世論がタイ社会に育まれていることに、驚かされる。

 

(原文: https://www.bangkokpost.com/opinion/opinion/2009999/hope-for-end-to-deadlock)

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