ドイツの総選挙で極右政党が第二党に浮上
旧西ドイツ州でも支持が拡大 高まる反移民の機運
- 2025/4/10
2月23日に行われたドイツの連邦議会選挙によって、極右政党である「ドイツのための選択肢(AfD)」が前回選挙から得票率を倍に伸ばし、第二党になった。3月25日から招集された新たな連邦議会では、同党が全体の4分の1にあたる150席以上の議席を有することになり、その影響力は見過ごせない規模となっている。「移民の再移住(Remigration)」を掲げ、反移民政策を訴える同党は、EUからの離脱など、国家主義的で現体制に反対する過激な主張を展開している。
支持を落とした中道左派政党
今回の総選挙でAfDの議員を選出したのは、主に旧東ドイツの5州だ。ベルリンに近いポツダムやライプチヒなど都市圏の3選挙区を除き、ほとんどの小選挙区でAfDの議員が選出された。2024年に行われた欧州議会選挙の結果でも東部における極右支持は明らかで、西部では「ベルリンの壁を再び作るべきだ」というジョークがしばしばソーシャルメディアなどで見られた。
German election map according to exit poll data.
— Clash Report (@clashreport) February 23, 2025
A stark contrast between West Germany and former Communist East Germany. pic.twitter.com/5zWx6PHdjB
このように、これまではAfDの支持があたかも東部特有の現象であるかのように考えられてきたが、必ずしもそうとは言えないことが今回の連邦議会選挙で明らかになった。今回は旧西ドイツの州でも、AfDが大きく支持を伸ばしたためである。東部チューリンゲン州の38%には及ばないものの、南部バイエルン州やバーデン・ヴィッテンベルク州、ラインランド・プファルツ州でもAfDが20%前後を得票し、ドイツ社会に衝撃が走った。
例えば、西部の旧ルール工業地帯に位置するゲルゼンキルヒェンの比例代表選挙で24.7%と最も多くの票を集めたのは、AfDだった。ドイツの選挙は小選挙区比例代表併用制で、有権者が2票を投票する。結果的に同市で選出されたのは、小選挙区で勝利した社会民主党(SPD)の議員だったが、SPDは比例で前回選挙より13%も支持を失っている。
旧ルール工業地帯の街では、これまで労働者の権利を主張する中道左派政党のSPDが伝統的に支持を集めてきた。しかし、そんな街でもSPDが支持を落とし、AfDが票を伸ばすという現象が起きたのだ。
なお、ゲルゼンキルヒェンはかつて炭鉱の街として栄え、第二次世界大戦後には周辺国から多くの炭鉱労働者が働きに来ていた。しかし、時代の変化とともに石炭業は縮小され、2008年には市内で唯一、採掘が続いていた鉱山も閉鎖された。同市は鉱山跡を公園にしたり、かつての工業施設を文化施設に改造したりするといった改革を進めてきたものの、大規模産業は依然として失われたままで、人々の所得は低い。
労働者の困窮化で高まる反移民の機運
ゲルゼンキルヒェンは現在、失業率が14%以上と高く、就労者の4人に1人が基礎的な所得支援を受けて生活している。ドイツのハンス・ベックラー財団・経済社会科学研究所が2019年に実施した調査によれば、同市の平均可処分所得は一人当たり1万7015ユーロ(約274万円)と、ドイツ全体で最も低い水準であった。家賃相場も低く、所得の低い移民労働者が次々と移り住んでいる同市は早い段階からゲストワーカーを受け入れており、移民とその子孫が人口に占める割合は2023年時点で37.6%と、全国平均の29.7%を上回っている。中東・アフリカ出身者だけでなく、ブルガリアやルーマニアなど東欧の国からの労働者も多い。
他方、同市では産業が限られており、政府に十分な予算がない。予算の不足からインフラの老朽化が進んでいるうえ、学校でも必要な修繕がすぐに対応できないのが現状で、治安が悪い地域もある。早い段階からゲストワーカーを受け入れ、多様な移民がともに働く場所として知られてきた同市は今、産業がなくなり、貧しい移民を多く抱える課題の多い街として知られるようになった。2024年にはサッカーのヨーロッパ選手権の試合をホストしたにもかかわず、イングランドのサッカーファンからソーシャルメディアで「クソ溜め都市」と酷評される始末だ。
そんななか、同市に昔から住んでいる人たちも、貧困化が進む街の様子を目の当たりにして「移民たちが金をむしり取っているのが原因だ」というAfDのロジックに影響されつつあるようだ。実際、今回の選挙でAfDに投票したのは、定職がない人や、生活に余裕のない人が多かった。
ドイツでは、難民認定を受けた人や低所得者は、市民手当と呼ばれる生活保護(成人単身者の場合、563ユーロ、約9万円)か、児童加算手当や住宅補助を受けることができ、未成年の子どもには子ども手当(一人当たり255ユーロ、約9万1000円)のほか、子どもの学習に必要な費用や昼食費といった手厚い支援もある。
別の街に住むある女性は、「子育ては皆、同じようにお金がかかるにも関わらず、所得が低い移民だけが支援を受けられるのは不公平だと感じる」と語った。AfDを断固として支持しなくても、低所得者の移民が増え続けていることを快く思わない人は一定数、存在しているのだ。
ドイツでは近年、エネルギー価格や家賃、物価が高騰しており、支援対象ではなくても、それほど裕福ではない労働者の生活が苦しくなりつつある。そうした背景から、低所得の移民と労働者の割合が高い地域では、反移民を主張するAfDが支持を集めているのだ。
同じ州内でも、可処分所得が比較的高いケルンやデュッセルドルフといった大都市圏では、比例選挙におけるAfDの得票率が10%前後とそれほど高くないのに対し、移民の割合が全国平均より高く、所得が低いデュイスブルグではAfDの得票率が20%に上っており、社会経済状況により投票行動が変わることが分かる。
スケープゴートにされる移民たち
極右支持が強い東部は、移民の割合が西部よりも低い。ドイツ統計局によると、東部における移民とその子孫が人口に占める割合は2023年時点で11.4%と、全国平均の半分に満たない。それでも、東部における外国人への嫌悪感は西部に比べて強い。
ライプチヒ大学が2023年に旧東ドイツ5州で成人3500人を対象に実施した調査によると、外国人が福祉国家を「利用」するためだけにドイツに来ていると考える回答者が約7割に上った(そのうち3割は「ある程度そう思う」と答えている)。また、6割程度が「ドイツは外国人によって危険なほど外国化されすぎている」と考えている。
ベルリンから近い東部ブランデンブルグ州のポツダムでAfDに反対する「極右に対抗するおばあちゃんたち」という団体で活動するウルスラさんは、「周囲のAfD支持者たちは、外国人が悪いと考えている」と語る。だが、実際にはそういう人々が外国人と接する機会はないため、偏見に基づいた考えではないかと彼女は言う。
実際、東部には大企業や国際的な企業が少ない。移民社会となって歴史が長く、外国人と接する機会が自然に増えている西部とは異なり、国際的な企業があるのは旧東独地域では大都市に限られる。外国人と接する機会がなく、彼らを理解しようとせず偏見に満ちているからこそ反移民のレトリックに陥り、極右政党に票が流れかねないと言うのだ。「自分たちの生活も楽ではないのに、外から来た移民ばかりが政府から金を受け取っていい思いばかりしていると考えているために、彼らの間で外国人嫌悪が高まっていくのだろう」と、ウルスラさんは考えている。
分極化する若者層
極右に対する支持は、一部の若者の間にも広がっている。調査機関インフラテスト・ディマップの出口調査によると、18~24歳の若者の4分の1から票を得たのは左派政党の左翼党だったが、それに次いで21%の票を得たのはAfDだった。
AfDは若者のSNSの使い方について熟知しており、ソーシャルメディアを通じて若者にうまくリーチしてきた。短い動画でコンパクトに主張を伝え、国が抱える課題に対処しようとしているスマートな党であるかのように見せているのだ。ミュンヘン連邦軍大学が所有するソーシャルメディア・モニタリングツールのSPARTAによると、連立政権が崩壊した11月7日から選挙前日の2月22日までの間に、AfDがTikTokにアップした動画は3億3000万回以上と、政党の中で最も多い閲覧数を獲得した。ドイツのフリードリッヒ・エーベルト財団が2024年に20歳未満を対象に実施した青少年選挙調査でも、若者層が主にソーシャルメディアから政治情報を得ていることが明らかになっている。実際、彼らの多くは新聞やラジオをまったく視聴せず、テレビもごくたまにしか見ないと答えており、ソーシャルメディアの影響が非常に強いことが伺える。
ノルドライン・ウェストファーレン州ゾーストという街のある中等学校で模擬選挙を行ったところ、約4分の1の生徒がAfDを支持したという。「彼らは極右が主張する通り、社会のすべての問題は移民が原因で起きていると信じているようだ。学校の校舎は老朽化し、電車などの社会基盤インフラも故障が多いなど、ドイツ社会には問題が多い。彼らはその原因をすべて政府が移民にばかりお金を使っているためだと主張する」と、同校の教員は語っている。
ミュンスター大学で教育科学を教えるカリン・ベッラート氏も、ドイツの新聞「TAZ」の取材に次のように答えている。
「多くの若者は、現在の政治が問題を解決できず、自分たちの課題や考えを真剣に受け止めてくれないと感じている。 それに対し、右翼過激派の若者文化は、規範的な家父長制的な男性性と結び付き、単純な解決策として彼らの目に映る」
多くの人が生活や将来に対する不安を抱えるなか、本来の問題から目を逸らし、外国人や既存の制度に罪をなすりつける極右政党。その他の既存の政党が有効な政策を打てない限り、極右の勢いを止めるのは難しそうだ。









