インドで新型コロナの感染爆発、医療崩壊の悲鳴
地元紙は検査と治療、ワクチン接種の分散を提案

  • 2021/5/6

 連日30万人を超える新規感染者が確認されているインド。医療崩壊の悲惨なニュースが世界に発信されている。4月25日付のインドの英字紙タイムズ・オブ・インディアは、この問題を採り上げている。

インド・ムンバイでワクチン接種を受ける82歳の女性(2021年4月28日撮影)(c) ロイター/アフロ

世界最悪の感染状況

 「医療施設からのSOSが発信されている」。

 ニュースを見る限り、インドからのSOSは、悲鳴だ。病院のベッド1台に見知らぬ患者2人が寝かされていたり、医療用酸素が極端に不足して死者が出たり、目を覆いたくなるような状況が続いている。インドはいまや、世界最悪の新型コロナ感染国となってしまった。

 「私たちは、全国の医療従事者たちが闘っているこの極度にストレスフルな状況を改善するために、国として行動する必要がある。デリーの病院では、医療用酸素が足りず、数時間おきに補充してほしいと悲鳴があがる。すでに多くの感染者が酸素不足で命を落としているのだ。医療従事者も、患者も、その家族も、なす術がなく、政府からの支援を必要としている」

 社説は、政府がまず新型コロナの検査や治療にまつわる負担を分散する必要がある、と提案する。「患者や家族は今、酸素や病床を求めて数えきれないほどの病院を回り、それでも見つけられずにいる。しかし、集中治療室を探し、酸素や医薬品の補充を依頼することは、患者やその家族ではなく、政府や地方の保健当局がすべきことだ」

 さらに、症状によって治療の優先順位や方法を区別するトリアージを導入すべきだとも訴える。トリアージはタミル・ナードゥ州やケララ州ですでに導入され、成功を収めているという。

NGOのネットワークに期待

 続いて社説は、「仮設病院」の設置を訴える。

 「もっと多くの仮設病院が必要だ。現在は、新型コロナの治療と検査、そしてワクチン接種、これらすべてが病院で行われている。いずれも、今、最も重要で優先順位をつけがたいが、例えば重症者の高度な治療だけを病院に任せ、酸素吸入だけが必要な患者は仮設病院に入ってもらったり、軽症な人のために治療施設や隔離施設をつくったり、もっと軽症の人は自宅で自己管理する仕組みにしたりするほか、ワクチン接種と検査を分離するなどすれば、医療従事者の負担は軽減されるだろう」

 また社説は、NGOのネットワークや資金力の活用も提案する。

 「爆発的に増加する感染者数と限りある資源を考えれば、NGOの活躍に期待せざるを得ない。彼らなら社会のセーフティネットから取り残されてしまった人たちにも支援の手を差し伸べることができるはずだ」

 インド政府は、海外からの寄附金が経済発展を妨げる可能性があるとして、昨年9月に海外寄附規制法(FCRA)を改正。認可された団体のみが海外からの寄附金を受け取ることができるようにした。社説は、「FCRAの改正によって多くのNGOが苦しむことになった。しかし、この危機的状況下ではその規制も緩める必要がある」と指摘した上で、海外からの寄附を幅広く可能にすべきだと訴える。

 「すでに数千もの命が失われたほか、多くの人々が苦しんでいる。新型コロナ感染の第二波を悪化させた政府の失策は、きちんと説明されなければならない」

社説は具体的には指摘しなかったものの、別の報道によれば、1日当たりの新規感染者数が1万人を下回った際、インド政府は宗教や政治の大規模集会を許可したという。感染症との闘いには終わりはない。共生することを覚悟しなければならないということだ。 

 

(原文:https://timesofindia.indiatimes.com/blogs/toi-editorials/sos-from-delhi-and-lucknow-bengaluru-indore-jalandhar-medical-supply-chains-need-urgent-shoring/)

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