タイ国民の政治不信に地元紙が警鐘
総選挙から1年あまりで現政権の支持率が急落
- 2020/10/7
反政府集会が相次ぐなど政情の揺らぎが続くタイ。9月29日付のタイの英字紙バンコク・ポストでは、社説で、政治不信の問題を採り上げた。
首相の支持率は18.6%
タイ国立開発行政大学院(NIDA)がこのほど実施した世論調査で、政治家や政党に対する国民の期待が失われているという結果が出た。
それによると、最も多かったのが「支持する政党がない」と答えた無党派層で、41.6%だった。「支持政党あり」と答えた人の中では、タイ貢献党が最も高く19.3%、続いてアナコットマイ(新未来)党が12.7%、国民国家の力党が12.4%と続いた。その一方で、タイで最古の歴史を持ち、連立政権も担う民主党は「消えてしまった」と指摘する。
しかし、昨年12月以来、3回目の実施となったこの世論調査の結果について、社説は「驚くべき結果ではない」との見方を示す。
さらに今回の調査で注目されるのは、プラユット首相の支持率だ。前回6月の調査での25.4%から大きく下がり、18.6%だった。この結果について、社説は「ほかのリーダーよりもましだったという程度」と指摘。その上で、半分以上の回答者が「現在の政治家の中に首相にふさわしい人はいない」と述べたことについて、「プラユット首相はじめ、他の政治リーダーたちにとって平手打ちを食らうような辛辣な結果だ」と、述べている。
社説は、2019年3月に実施された総選挙の投票率が74%に上り、国民の政治への関心の高さを感じさせるものだったと振り返った上で、「今回の結果はそれと対照的だ。こんなにも早く、国民は政治に失望してしまった。この1年余りの政治家たちの行動が、国民の期待を裏切るものだったということにほかならない」と述べ、政治不信の原因は政治家たちにあると指摘した。
手遅れになる前に
この調査が行われていた最中、タイ国内では憲法改正や議会の解散などを求める反政府集会が相次いで開かれていた。憲法改正は9月24日に採択が予定されていたが、議論が尽くされていないとの理由で11月に延期になった。社説は、「もし、採択が実施されていたら、政治家への不信任の割合はさらに悪化していただろう」と、みる。
このところタイの政界には良いニュースがない。7月にはプラユット政権の経済政策を担っていたソムキット副首相、ウッタマ財務大臣をはじめとする経済担当閣僚たちが辞任。ウッタマ氏の後任となったプレディー・ダオチャイ財務大臣も8月末、就任わずか26日で辞任した。政治的な対立があったのでは、とささやかれている。
相前後するように、8月ごろから学生たちによる反独裁のデモ集会が相次いでいる。「こうした反政府集会は、2014年にプラユット首相がクーデターを起こした時に掲げた “国民和解” の約束がいかに茶番であったか、そして、この国が今もいかに深く分断されたままであるかを示すものだ」
揺れるタイ政治の中、国民が熱狂するような指導者の選択肢がないという現状は、タイに限った話ではなく、身につまされる。
社説は言う。「プラユット首相をはじめ、そのほかの政治家たちは、この最新の世論調査結果を警鐘としてとらえるべきだ。彼らは、選挙から1年余りという短い期間に、人々、特に支持者からの信頼を失ってしまった。彼らは現行のシステムを修繕し、民主主義が今もこの国に存在していることを早急に証明しなくてはならない。手遅れになる前に」
(原文: https://www.bangkokpost.com/opinion/opinion/1993263/nida-poll-a-wake-up-call)