新型コロナの変異種確認で警戒強まるインド
地元英字紙は都市封鎖による経済への打撃を懸念

  • 2021/1/3

 英国で新型コロナウイルスの変異種が確認され、コロナ禍は世界でまた新たな局面を迎えている。インドでも12月29日、英国からの帰国者から変異種の新型コロナが確認された。インドの英字紙タイムズ・オブ・インディアは12月22日付けの社説で、コロナ禍の経済政策について採り上げている。

インドでも英国から帰国した6人の検体から新型コロナウイルスの変異種が検出され警戒は再び強まっている (c) Ketut Subiyanto / Pexels

変異種の確認で不安高まる

 インドは、米国に次いで新型コロナの感染者数が多く、12月半ばには1000万人を超えた。死者も14万人以上にのぼっている。しかし、一日あたりの新規感染者数は、ピーク時の9万人以上から、現在は2万人前後に減少している。

 しかし、英国で新型コロナの変異種が確認され、緊張が再び高まっている。12月29日には、南部ベンガルールとハイデラバード、西プネの医療機関が、それぞれ英国からの帰国者6人の検体から変異種を検出したことが明らかになった。

 社説は、「(新年などの)行事が続く季節を迎えているにもかかわらず、英国では変異種のために都市封鎖が実施され、休日の予定も台無しになった。新たな感染への恐怖は雪だるま式にふくらみ、インドにも及んでいる」とした上で、「ムンバイを州都とするインド中西部のマハーラーシュトラ州では、一時的な夜間外出禁止令が出された。東部のタミルナドゥ州では、ホテルやパブ、ビーチリゾートで新年のお祝いが禁止された」と、述べる。

 さらに社説は、「せっかく感染者が減少傾向にあるのだから、政府は今回の事態に格段に警戒を払うべきだ」とした上で、「都市封鎖による感染予防はすべきではない」と主張した。「4月と5月の経験を鑑みるに、都市封鎖はもはや有効な対策ではない。独立系シンクタンクのインド経済監視センターによれば、失業率は4月のピーク時に23.5%にまで上昇したが、経済活動が再開するとすぐに雇用も好転した。11月末から12月21日の間、失業率はやや上昇したものの8.5%にとどまっている」。

 社説によれば、2020年末の失業率は回復基調にあるものの、都市封鎖前の状態には戻ることはないという。「ここで変異種による感染拡大を恐れて再び都市封鎖をすれば、経済はさらに深刻な打撃を受けるだろう」

経済の落ち込みを食い止める

 社説によると、インド準備銀行(中央銀行)は2020年度の国内総生産が7.5%落ち込むという予測を出しているという。

 「このような特別な状況下では、複雑な政策立案が必要だ。国内消費も落ち込むなか、今、求められているのは、政府がギャップを埋める施策をとることだ。政府がこのほど発表した経済刺激策は、前年度と比べてもさほど革新的なものではなかった。食糧生産に対する補助金は前年度よりも低いほどだった」

 「今年度の財政赤字の原因は歳入の減少であり、歳出が増大したからではない。感染予防のための選択肢として、都市封鎖か、より厳しい行動規制のどちらかだと言われているが、どちらも明らかによくない方法だ。各州は、行き当たりばったりの行動規制に頼ってはいけない。公衆の場所ではマスクをつけるなどの感染予防策を徹底することが必要だ。その一方で中央政府は、公共事業への歳出などより積極的な政策が必要だ」

 安易な都市封鎖は経済に致命的な打撃をもたらす、他にも予防手段はあるーー。社説はこう主張する。しかし、変異種の感染がインド国内でも確認され始めた今、経済回復策と新たな感染予防策のバランスをとることがさらに難しくなっているのは事実だ。

 

(原文: https://timesofindia.indiatimes.com/blogs/toi-editorials/the-right-balance-vigilance-is-essential-to-guard-against-virus-mutations-lockdowns-must-be-avoided/)

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